数へ日のまた壁にゐる冬の蜘蛛 上田信治

朝蜘蛛は殺してはいけないからというわけではないが、あまり生活に支障がないので、私は部屋に蜘蛛がいてもあまり気にしない。これが血を吸ったり何か汚したり恐ろしく繁殖したりといえば別だが、蜘蛛はそんなことはない。蜘蛛がいるとゴキブリがでないと聞いたことがあるからかもしれない。
また、同じ場所に蜘蛛がいる。巣をつくるわけでもなく、白い壁に黒い点として存在するのだ。一瞬ぎょっとして、すぐに蜘蛛であることでその場を何事もなく過ごすのだ。そうして見逃し続けた蜘蛛が、トランクの中で干からびているのを先日見つけた。
数え日としてしまうと、年末に大掃除をするからと理由はついてしまうのだが、ずっと置きっぱなしにしていた大きな荷物をよけたりすると、蜘蛛を見つけやすいのも確かだ。

「ねむい」週刊俳句297号より。