寒鰤の胴に朱書きの値札投ぐ   広渡敬雄

魚市場の風景だろう。まだ夜明けも迎えていない時間に行きかう人々と魚。
メタリックな艶めかしさのある「寒鰤」と「朱書きの値札」の対比のあざやかさに気付かされる。
貼る、置く、載せる、ではなく「投ぐ」とすることによって臨場感が生まれ面白い。
掲句の初案は、「胴」ではなく「腹」であったとのこと。
「胴」にすることによって、寒鰤の一匹まるごとの力強さが迫ってくる。

第58回角川俳句賞受賞作品「間取図」より。

昨夜は、角川俳句賞・角川短歌賞の贈呈式でした。
広渡さんのお人柄もあり、多くの方がお祝いに駆けつける華やかな会でした。
選考委員の小澤實氏は檀上で広渡作品について、特に中七の「や」切れの多さを指摘し、
それは単調な印象を与えるものである一方、安定感や格調の高さにつながるといい、
今年は、切れ字を愛した石田波郷の生誕100年であることにも触れ、
切れ字の復権を示唆する作品である、と述べていました。