顔洗ふ猫の仕草で足袋を脱ぐ   小島ノブヨシ

足袋を脱ぐ動作が猫が顔を洗う仕草のようだという見立ての句。
ぐっと体を屈めて足袋を脱いでいる姿は、靴下を脱ぐときのそれとはやはり違う。
そもそも猫が顔を洗うとは、猫が唾液でヒゲらへんをこすっていることをそう見立てた言い方。
この重層的な見立てや、「仕草」という少しずらした直喩に奥行が感じられる。
白い足袋の、真新しい光沢のある感じ、もしくは使い込まれて柔らかな感じに、猫の姿が重なり、
そこには猫はいないはずなのに、どこか猫の体温を感じる一句。

「私雨」(花森こま編『君住む街角』文學の森、2013.3)より。