また一歩鷺の濁して水温む  下坂速穂

透き通れば冷たく、濁ればあたたかいという通念はどこからくるのだろう。鷺が一歩あゆみをすすめるごとに、水底の泥が立ち、水が濁る。その水が日差しと気温でどんどんあたたかくなってゆく。「一歩」は鷺の一歩だが、同時に春の一歩でもある。また一歩、また一歩と近づいてくる春を、混沌として待とう。

句集『眼光』(ふらんす堂・2012年8月)より。