むら雲や草食獣は遠見ぐせ  火渡周平

「草食獣は遠見ぐせ」といわれれば、確かにそうだと頷く。
肉食獣は、たえず獲物を狙って視線を低く置き、捕えられるものを探しているイメージだが、それに対して草食獣は、漫然と広がる草原の草を少しずつ移動しながらただひたすらに食べてははるか遠くを見つめているような雰囲気がある。
「むら雲や」という上5は、単に句に格調を与えバランスをとるために置かれただけではなかろう。「むら雲」という伝統的な言葉につきまとうある種の呑気さが、草食獣ののんびりとした在り方を醸し出している。

「俳句研究」昭和55年6月号より。