枝に紐がからまって風船がひっかかったまま、夜を迎えてしまった木。子どもが風船を持ち込む可能性が高いから、公園の風景を思った。夜の木の枝に風船がひそと浮いていて、公園の灯がその色をほのと照らしている。
その風景だけでぽっかりと心に穴の開くようなさみしさが感じられるのだけれど、それを「はなさずにいる夜の枝」と、枝が風船を引き留めているかのように擬人化することで、余計につらくなる。風船は空へ行きたい、枝は引き留めたい。恋人との関係が、この風船と夜の枝のようなものだとしたら……うーん、つらい。というある種の比喩として読めるのも、擬人化という技法をシンプルに生かしているからだろうか。
週刊俳句第308号、十句作品「叙景」より。