春立つと木に戻りたき木椅子かも  堀本裕樹

春が来ると、あちこちの木々が芽吹きにむけて動きだす。その同族のざわめきを感じ取るのか、すでに椅子になってしまった木もまた、そわそわしているように感じられるというのだ。

この句は「かも」がミソ。すわりの悪い「かも」という下五によって、読者もなんとなくもぞもぞする。その感じが、「木に戻りたき木椅子」のそわそわしている気分を醸し出している。

第一句集『熊野曼荼羅』(文学の森・2012年9月)より。