綿虫に見つけてもらふまで歩く   矢口晃

ふわふわと雪のように飛ぶ「綿虫」。街の中や野山、割合どこででも見かける虫である。
ふつうは、綿虫を見つけるために歩くだろう。つまり自分が見つける側の立場となる。
しかし掲句は、綿虫に見つけてもらいたいと歩くのだ。自分が見つけてもらう側の立場となる。
見つけてもらいたいと思っているだけではなく、そのために「歩く」という言葉が切実だ。
綿虫のどこか神秘的な姿に、なにか希望を持っているのかもしれない。
そして、綿虫に見つけてもらうだけではなく、
埋もれていくような日々を過ごす自分から誰かに掬い上げて欲しいという思いも感じられる。

「メロンパン」(『ガニメデ 57』銅林社、2013.4)より。