凍蝶になほ大いなる凍降りぬ  藤田湘子

何という冷たい句なのだろうか。「なほ」とすることで、その景色に流れる時間がゆっくりとなり、雄大なものに見えてくる。そこには寂しさや孤独しかないような小さな景色だけれども、「なほ」「大いなる」とすることで、ぐっと視点か小さい凍蝶から、それを包む大きなものへと引っ張られる。それは、本当に冷たさばかりが存在するものではあるけれど、寒さまでありがたく思えてしまうほど、神々しい情景でもある。

『藤田湘子の百句』(2014年 ふらんす堂)より。