ハイクは玄さん⑤

昭和61年8月15日永田書房発行『齋藤玄全句集』より

とあるビール工場の見学に行ってきました。どうも大人気らしく予約をきちんとしなけりゃとても入れそうにない感じでした。これが実に楽しい。

有名企業ですから、室内は清潔、冷房もよく効いていて、ガイドのお姉さん達は例外なく綺麗で優しく、ほんと綺麗で優しく、こんなよくしてもらって無料で良いのかしらんと強く感謝致しました。ビールはこうやってできますのよ、と綺麗なお姉さんのガイドで説明していただき、はい、お楽しみビールの試飲。これが楽しみで皆来てるんですが、飲む時間が20分しかない、それでもお一人様三杯までとお願いします、と、なんと三杯も飲んでよろしいのか!A子、ほらみろ、有名企業さんは偉いなぁ、と二人で12時から三杯づつ美味しくいただきました。

一緒の時間に50人ほどで見学するんですが、おじさん達、みんな酔っ払って有名企業の綺麗なお姉さんにデレデレと話かけにいきます。なんか、おじさんって良いなと思いました。8月の14日で僕も30歳になります。プリティなおじさんになろうと思います。

はい、斎藤玄やりましょうかね、第五句集『雁道』を読んでいきましょう。ちなみにこの句集、第十四回蛇笏賞でございます。

青き踏むより踏みたきは川の艶

清らかにぴちゃと

牡丹の紅の強情猫そよぐ

命を強く欲してます

いやといふほどの夏蝶獄の塀

また来ました、網走刑務所。夏蝶がむわっと力強い。

一身を遊ばせながら墓参り

魂をひらひらさせながら参る

残る世のおほよそ見ゆる鰯雲

このおほよそが悲し過ぎる、でも人にはある時期から見えてしまうものかもしれません

桂郎忌の枯木波郷忌の枯木中

あぁ…、みんな、みんな…。寂しく辛く激しく。

晩年の過ぎゐる枯野ふりむくな

寂しい男は辛いけれど美しい。

声もたぬ涅槃の鯉と遊びけり

じーっとじーっと

耳底にゐて懸命の鉦叩

聞こえた方が良いのか、いや、うーむ

きりぎりす飼ふは死を飼ふ業ならむ

じゃあ飼わなきゃいいのに、という選択はなし

寸前のこほろぎの音の減りに減る

気にしなけりゃいいのにというわけにはいかない。それも大切な才能の一つなんでしょうね。

往生の鯉に小春の日を當てて

この視線は少し安らかなんでしょうか

冬椿一輪にして機嫌よく

少し体の調子が良い、そんな日の清らかな気分。

すさまじや鰍釣りゐて釣嫌ひ

釣らなきゃいいのには言わない約束で、あぁーあ、すさまじや。

真黒な鯉を誘ひて秋の鯉

秋も

元旦の頭中の鯉は異なるもの

元旦も鯉を思ってます

大寒のたましひ光る猫通す

おぉ猫よ!と呼びたくなる猫。

鯉守のやがてさびしき初桜

何度も何度もしつこいぐらい鯉、やがて、やがて…さびしき初桜。

鯉しぐれいよいよものを言はむとす

斎藤玄の最後に見えていた景色を考えると、想像する事しかできないけれども、胸が鋭く痛みます。それは生ぬるい空気でない事だけは確か。

うーむ、前回も書きましたが斎藤玄の本当の魅力は小論を読んでも100句ぐらい読んでもヒントにしかならないと思います。ぜひぜひ、全句集、読んでみてください。鯉の句ほんとにモリモリです。

次回、玄さんラストです。

じゃ

ばーい