夏痩や爪切る音の乾きたる
俳句甲子園スタッフとして中四国を行き来するようになり、縁が深くなった土地の一つが愛媛県今治市だ。ゆるキャラグランプリでバリィさんが優勝し有名になったが、もともと造船とタオルで名が知れたところである。
僕が高校生だった頃、俳句甲子園で出会った今治西高校のメンバーとは特に意気投合した。同期の矢野真平という男は、今年から立ち上げた俳句甲子園実行委員会の中国支部にも協力してくれている。彼とは高校卒業後も、俳句甲子園を目指す高校生たちのために何かしてやりたいという思いが一致して、ある年、今治の山奥で俳句合宿をしたこともある。そのときの高校生が、NHK松山放送局制作の番組「学生俳句チャンピオン」で歴代チャンピオンに名を連ねる「川又夕」や「馬越貴英」である。今年は彼らの後輩にあたる「越智祥雄」が同番組で優勝した。「学生俳句チャンピオン」は大学生たちがパフォーマンス豊かな俳句バトルを繰り広げる番組なので、是非興味のある方は調べてみて欲しい。
当時の合宿があまりにも楽しかったため、大会に向けたスタッフの研修も兼ねて、この夏8年ぶりに有志で一泊二日の俳句合宿を行った。それぞれ仕事があったため、一日しか参加できないという者もいたが、驚いたことになんと当時の合宿メンバー全員が集まったのである。しかも、しばらく俳句から離れていたというのに、ちゃんと歳時記や筆記用具を用意して。
その合宿で一番になった句がこちら。
夏痩せや浴身一指づつ洗ふ 矢野政輝
彼は8年ぶりに作句したという。この句、自分の躯の余分なものが全て削げ落ち、感覚一つ一つが鋭くなっているような感覚が伝わる。高校生のために何かしようと集まった皆だが、こうやってまた自分たちも楽しみながら俳句に触れていけることが嬉しい。
