アワアワあわのせいほかな 第二話「西湖でちゃぷちゃぷ」

(『阿波野青畝全句集』花神社、1999)

『西湖』を読む

 

さ、なんの計画も無しに全句集を読む、これがなかなか楽しい。

酒ばっかり飲んでると体を壊しますが、俳句ばっかり読んでれば・・・、うん、まぁ悪くはないです、友達がたくさんいるだけが人間の価値ではないのです、男は黙って全句集!さ、二回目の青畝です、今回は1986年刊行の『西湖』第10句集です、句数はなんと1571句!はたして麒麟が飲まずに最後まで読むのか、いざ出発!

 

 

眠い目をこすれば春の明けにけり

 

ごしごしという様が見える、無性に可愛い

 

 

元日の鶴大股にすすみけり

 

足長いしね

 

 

雪の橋弁財天に行けずとも

 

弁財天は美しい女神ですからね、見れないとなるとますます美しく感じます、雪の橋がとってもきれい。

 

 

ほどあひや米寿の年の豆の数

 

米寿で程合い!?結構食べますね

 

 

応といふまに吾米寿初蝶来

 

そんなわけない・・・と信じたい

 

 

啓蟄の蟻今何を求むるや

 

別に、なんて蟻は言わない

 

 

きこえざる声もただよふ寝釈迦かな

 

なんだかとってもありがたーい空気

 

 

あてたれし赤外線の寝釈迦かな

 

急に現代的

 

 

鳥雲に入りぬと埴輪手をあぐる

 

埴輪「はーい、鳥雲に入りハニワ!」

埴輪の事がちょっと好きになった。

 

 

たんぽぽは良寛のため毬と成る

 

ぽぽぽぽーん♪と言ったとか言わなかったとか

 

 

地球儀の日本を過ぎし春蚊かな

 

大きいような小さいような、春の蚊がのどかで良いですね。

 

 

ビーナスの貝に容れたしさくらんぼ

 

いや、好き過ぎでしょう。

 

 

糖尿の我を咬む蟻ひねりけり

 

あ、ちょっと怒ったのですね、わざわざ句にするところが面白い。

 

 

羽抜鳥走り高跳び溝に落つ

 

どうしようもない

 

 

恋愛と全く無縁落し文

 

言い切っちゃうところがなんともチャーミング

 

 

吟行や疑ひもなく落し文

 

すぐ次の句がこれ。吟行や、の上五がたまんないです、これまた可愛い。

 

 

漫画出来たり一枚の梶の葉に

 

え?何書いてんすか?『がんばれ!ぼうしゃ君』とか、気になる・・・。

 

 

コスモスに高原の牛満腹か

 

ホトトギス出身の幅の広さはほんとにすごい、この句なんて誰に見せたって大抵は好きだと言われるんじゃないでしょうか。

 

 

汁たつぷり残して年を越しにけり

 

具は食べたのね、なんだかのこった汁が余力のような余裕のような

 

 

お年玉それの不平が面白し

 

余裕ですなぁ

 

 

一賀状蟹に飽きしとありにけり

 

・・・自慢だよね

 

 

月丸し春一番のあとに出て

 

可愛らしい毬のような月が見えますね。

 

 

壷焼はシャボンの泡を噴きにけり

 

平凡な発想のようでどこか違うんですよね、噴くの字が良いのかな、なんとも美味そう。

 

 

足もげてまだ駆け回る油虫

 

ぎゃあ~

 

 

青芝にホールインワン昨日なりし

 

最高に気持ち良い、昨日なりしが嬉しさが伝わってきてほほえましい。

 

 

枝豆の豆鉄砲がわが口に

 

はむっ

 

 

尼寺と呼ばれ栗めしむかごめし

 

この寺の秘密の楽しみ、めしと平仮名で書くと白米を想像して食欲をそそる。

 

 

かくれんぼしたる眼鏡や老の春

 

ほのぼのとしたトモゾウの世界ですね、ちなみに僕も半年に一回ぐらいは眼鏡を無くします。

 

 

大いなる耳垢掘れて老の春

 

ほのぼのとしたトモゾウの・・・ってさっきもそれ言ったね

 

 

春の山羊音符ある紙食べにけり

 

春の明るい感じがよく合ってますね、でもね、これ食べちゃマズイ紙の気がしません?

 

 

春の風邪うどんがのびてゐたりけり

 

あぁもったいない。この句、春の風邪という事を考えると、見守っている優しい目を感じます。

 

 

磯あそびボッティチェリの貝出でよ

 

はしゃぎ過ぎです

 

 

牡丹詠む我に蒲焼匂ひけり

 

ちなみに、蒲焼きやの句はない

 

 

見つけたる蚯蚓流さん洗面器

 

意外と容赦ない

 

 

三日前の新聞は炉の灰となる

 

タダゴトは時にこんなに面白くなる、この境目を攻めるのが技なんでしょうね。

 

 

足早のてんと虫はや手の裏を

 

チョコチョコチョコっと動く姿が見えて楽しい

 

 

納豆の糸切れにくき残暑かな

 

ネバネバ感じと残暑がよく合ってますね

 

 

穴に入り消え了はるまで蛇ま白

 

そりゃそうなんだけど、じーっと見ている様が面白い、白蛇ってとこが神秘的で良いですね。

 

 

梟もなついてくれば児の如し

 

かわいい。梟も青畝翁になら、なつくかも。

 

 

何くそと鮟鱇ぶつた切つてけり

 

切りにけり、じゃなくて切つてけり、の方が、何くその感じが出るんでしょうね。

 

 

雑煮餅切れず青畝の頤(あご)うごく

 

もぐもぐもぐ

 

 

かるた取り天下分け目に固唾呑む

 

またまたぁ、そんな命かけてやらんでも・・・

 

 

凍鶴の一本足の案程度

 

もうそれは世界の王さんの如く

 

 

大声の素十世に亡し花わらび

 

へー、と言いたくなる句。こういう句は年が経つに連れて貴重になってくると思います。

 

 

やどかりの親子衝突してころぶ

 

あいたって言ったとか言わなかったとか。それにしても青畝の目は本当に優しい

 

 

マッサージもう明易の伊香保の湯

 

至れり尽くせりとはこの事よ

 

 

球体の月を揚げたり甲子園

 

有名な句ですが好きなので敢えて載せました、どんな言葉を使っても使い方次第でおもしろくなる。

 

 

あつ熱し唐もろこしを鷲掴み

 

男は黙って鷲掴み

 

 

絵馬二頭はねまはるなり神の留守

 

夢のある句、荷物は絵馬二頭、なんてね 、これはこれで面白いな

 

 

而うして一書閉ぢたり除夜の閑

 

これが最後の句、ほのかに余韻を残す最後にふさわしい句ですね。

 

 

さぁ1571句、読み終わりました。句の数だけ聞くと読むのをためらう数ですが、あちらこちらに面白い句や馬鹿馬鹿しい句が散らばっていて、明るい気分で最後まで読めますよ。

毎日毎日面白くねーなぁー、畜生が、と荒んでいる方なんかは、休日に『西湖』を読むと救われるかもしれません、お試しあれ。明るいだけじゃ好きになれませんが、僕、明るいのは良い事だと思いますよ。

 

と、言ってみたけどそういや、今日人間と会話をしてない事に気付きました。

あわわ、まぁそんな日もありさ。

では続きもまた飲んでない時に!

 

『阿波野青畝全句集』花神社、1999

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