2014.9.25 ふらんす堂発行
鴇田智哉句集「凧と円柱」より
テレビを観ながら書けるもの、読めるものもあります。当然これは無理、というのもあります。
テレビの音で本の中の世界が壊されるのがもったいない、という本も。
夫婦とは共同生活でありますから、僕はきりんのへやを書く時にできるだけテレビを消せとは言わないようにしています。
久しぶりにテレビの聞こえないところに逃げたい句集が刊行されました。鴇田智哉さんの第二句集「凧と円柱」です。
今、僕は左にトイレと前に風呂場が見えていて、洗面所を背に椅子を置き、それに腰かけてこの文章を書いています。それほど、邪魔をされたくなく、面白い句集です。
刊行されたばかりなので、あまり多く引用すると申し訳ないので、チラッとだけ紹介させていただきます。
春めくと枝にあたつてから気づく
あ、そう言えば。
円柱は春の夕べにあらはれぬ
ズンと。
脚のあるくらげが海に帰りけり
さ、帰ろう。結構速そう。
石ながくのびてゐるなり秋の風
これは妙な句。いや、妙な石。なんとも気になる魅力ある句。
春昼のだれもの曲がる角のあり
ぱっと消えます。皆。
三つほど悪い茸の出てゐたる
これは悪い、かなり悪い。食べては駄目、三つとも駄目。三つというのがなぜだかとても可笑しい。
ここは何処だらうか海苔が干してある
伊東あたりだろうか。
近い日傘と遠い日傘とちかちかす
おーい。やぁ、おーい。
まつくらな家にとんぼの呑み込まる
すっ。
こほろぎの声と写真にをさまりぬ
ぴーす。これ、大好きな句です。
顔のあるところを秋の蚊に喰はる
顔から狙います。
うすぐらいバスは鯨を食べにゆく
ひそひそと、嬉しげに。和歌山あたり、いや、知らないけど。これも印象的な句。
そんなに引用しちゃ悪いなと思って、倍以上消しました。紹介したい句、ほんとは倍以上あります。
オススメの句集なので皆さんぜひ。
じゃ
ばーい。