かな女かな 12

平成25.11.20 東京四季出版発行
『長谷川かな女全集』より。

生涯一度も煙草を吸ったことがない。煙草には色々な種類があるらしく、なにやらきついのやら軽いのがあるらしい。ビールを飲むか泡盛を飲むかみたいは違いなのだろうか。それともロックで飲むかお湯割で飲むかみたいな違いだろうか。ライターにも洒落たのから野暮なのまで色々あって選ぶのが楽しそう。

冬空にぷかぁと煙を吐きながら、死んだ魚みたいな目をしてる人を見ると、ちょっと良いなと思う。

でも喘息だったので、やっぱり吸わない。吸わないのと吸えないのは違うのが悲しい。吸わないけど。

かな女なんと12回目ですが、今回でラスト。この全集には楽しませてもらいました。実にお得な買物です。

では『牟良佐伎』とそれ以降より。

野兎の出て草原の岩やはらか

兎やはらか岩やはらか。関係無いけど芋銭の描く岩はやはらかだと思う。

冬菫水透明に発光し

三ツ矢サイダーより透明に。

川上る馬鹿貝乗せし舟のろのろ

馬鹿貝を楽しんでいる。

爪もあつて仔猫は猫となりつつあり

でも好き。

沢蟹つぎつぎ走り山風追ひつけず

沢蟹も好き。

雁仰ぐ到底一人にはなれず

だって寂しいじゃありませんか。

音消して尼が二人や夜の桜

二人なら良い。これは好きな句。

蜘蛛の子の一つ離れて見れば愛し

弱々しいものは可愛い。

糸とんぼ小諸の虚子を語れるに

糸とんぼぐらいの涼しさが良い。

長き箸もちて海鼠をうごかせしが

うへぇ。

鶉出て春昼母子だけで坐る

そんな時間が心やすらか。

金魚売るや子らは遊女の名を知らず

大人の世界には、色々あるのさ。これも好きな句。

紫の帯流る夢ほととぎす

僕は赤やピンクの服をよく着ますが、最後は紫を愛そうと思っています。

夫と妻の一行づつの初日記

これも良い。だらだら書かないところが良い。

橋二つ渡りてあづま踊かな

駆けつけるなり、大好きな東をどり。

背負はれて峠越しけり春の夢

そんな晩年も良い。

無色となつて抜け出す魂や繭ごもり

無色無臭。

図絵になき空地にのびし大芒

そんな芒に私はなりたい。

ちょっと長かったけど、かな女の全句集をやりました。かな女はまだ知られていない句がたくさんある作家だと思います。全集オススメです。

次、何やろうかな。

じゃ

ばーい。