どんと中略

2016.5.16 ふらんす堂刊行
加藤静夫句集『中略』より。

俳句を読むにしても作るにしても、最後の最後はどうしても好みになりがちで、「面白い句」と「渋い句」のどちらかを選択しなければならない時は「渋い」を選択します。もちろん逆の人も半分ぐらいいるでしょう。

「かなり面白い」と「かなり渋い」ではどうだろうか…。

あれ、「かなり面白い」が勝ってしまうかもしれない、と考えさせられた句集が加藤静夫さんの句集『中略』です。

この面白さで2千円は安い、それ以上に楽しめますからぜひ買って読んで下さい。

ではさっそく

アスパラガス茹でるやさしさにも限界

限界へ限界へ一歩一歩。

凶と出てうすらひつんつんとつつく

どんなもんかいなと。

紙幣より硬貨は健気春一番

紙幣は羽が生えているけど、硬貨はなかなか義理堅い。

子規多分早口桜餅ココア

多分せっかち。じゃないとあんな仕事量は無理。

遠足の頭たたいて頭数

いるいる、うん、ちゃんといるいる。

花は葉に男のくせに楽しさう

にやにやしやがって。

二人から鬼灯市の誘ひあり

美女と、美女。

竹落葉昼を済ませてから逢はむ

えぇ、ちょっと和服な綺麗な人と。

ファックスは着いたか月は出てゐるか

月が綺麗ですね。

木葉髪飲む打つ買ふの飲む一途

僕もそれ。打つ買う金があれば飲む。

冬たんぽぽ本気になればすごい我

すごいんだぞ。ほんとだぞ。

松とれて女と会へり北千住

昼からやってる飲み屋へGO。

落椿跨いで帰る家がある

お家へ帰ろう。

桃咲いて鶏(とり)が卵につまづいて

世界のどこかには、長閑がある。

猫の子に加藤の姓を与へたる

加藤にゃん吉。

国を挙げて暑がつてゐる暑さかな

あっつー、ほんとに。

水着なんだか下着なんだか平和なんだか

と言いつつ見る。

箱庭や声を殺して独り言

あー、楽しい、あー幸せだ(小声で)。

飲み潰れるといふ夏の終り方

夏はその辺で寝ていても大丈夫、全然平気。秋までは平気。

花野より戻れば解雇されてをり

わーお。

生姜湯や下着かなしき駱駝色

雨はレイニーブルー。下着は駱駝色。

狼に少し遅れて人滅ぶ

人類よ、粘ろう。

素敵な句集でした。

じゃ

ばーい