2017.5.15青磁社刊行
山口昭男句集『木簡』より
猿丸さんがチェーン店の牛丼を食べるとお腹をこわす、という話がすごく好きで、猿丸さんを見かけると必ずこの話をする。
ねぇねぇ、猿さん、◯◯で牛丼食べるとまだお腹こわしますか?と聞くと、猿さんはあのハンサムな顔で困った表情をして、お腹を抑えながら、いやー、そうなんだよー、とか言ってくれます。あのカッコイイ猿丸さんだからこそ面白い。
先日、小津夜景さんと関さんのトークイベントに行って、最高な時間だったんですが、久しぶりに色んな人に会えたのも良かったです。
好きな人達と会うと心がほかほかするような感じがします。それと、今日は飲んじゃうけど、明日からは勉強するぞ、と思えるのも良い。
さて、何回か最近の良い句集をやろうかなと。
山口昭男さんの句集『木簡』を読んでいきます。あ、この句集、中身だけじゃなくて装丁も清潔で美しいので、ぜひ手にとってみて欲しいです。
では中身へと。
土色の顔の出てきて飾売る
そこを写生。
春眠や水の流れる水の中
春の夢のようないい気分。
てつぺんにあきて天道虫おりる
のぼったり、おりたり飛んだり。
むづかしきことをしてをり金亀子
これ面白いです。裏返ったりしたのかなと。
ががんぼを大づかみしてこの女
ががんぼ「ぎゃあ」
ひととほり雨に濡れゆく寺の秋
秋の寺、でなく寺の秋。この秋らしさは涼しくて気持ちが良い。
置いてある石榴の中がまる見えで
石榴は中がすんごい。
日焼して一本長き柿の枝
これも面白いですね。青柿以外の夏での柿の詠み方。俳句には色んな方法があるなと。
木簡の青といふ文字夏来る
涼しくて良い句集名ですが、この句もまた清潔で好きです。作者が爽波に師事していたことを思うと、美しい思い出がよぎるような感じもある。
指で読む紙の表や秋の水
紙の表が良いですね。
ふりむいて蟷螂の貌かたむいて
三角のこわい顔。
竹の根のみどりうきたる良夜かな
美しい、静かな夜。句集中最も好きな句の一つ。心が落ち着いてくるようなところが良い。
山中に蟹歩みたる寒さかな
山中は寒い。
春風や色鉛筆に金と銀
特別な色。
ばつたりと妻にあふ日のねこじやらし
やぁ、君か。ちょっと嬉しい。
狐火を見る赤い服青い服
これも好きな句。真っ赤と真っ青と狐火と。
裏返へりては春の水らしくなり
たぷんたぷん。
写生って当たり前ですが、写生しただけでは駄目で、写生したことによって句が面白くならないと駄目なんだよなと、この『木簡』からたくさんのことが学べました。
じゃ
ばーい