ナウいきりん

興梠隆『背番号』(角川書店、2011.7)
山口優夢『残像』(角川学芸出版、2011.7)
天野小石『花源』(角川書店、2011.6)

床屋に行くと、髪が多くて硬くてしかもくせ毛ですね、そして、切りにくいですよ、と言われる、僕はどんな風に切りましょうか?と聞かれるのが嫌いで(照れるでしょ?)、いつも、こざっぱり適当に、とか言ってしまう。先日東京堂で池田澄子さんのトークイベントがあり、どうせたくさん俳人が来るだろうから、こんな獣のような髪型(2ヶ月放置)ではいけない、と、バッサリさっぱり、良い感じに髪を切りました、そしてヤングな感じに染めたりして(茶色と赤を混ぜた色なのさ)。
そしたら会場に来てたスピカ三姉妹がですね

Rりさん「えぇ、いや、なんかこう、髪が気になって、えぇ」

僕はカツラか

Kーのさん「茸みたい、適当にとか言うからよ、妻夫木みたいにしてください、って言えば良いのよ」

本当にまぁ他人事だと思って、茸が妻夫木になりますか。

H子さん「・・・・」

えぇっ!?こう・・・、なんか言っちゃいけない、みたいな目で見ないで、ほら僕だよ、麒麟だよ

Rりさん「何を目指しているんですか?」

僕の髪型はスベッテない、スベッテないぞ。

あとで会場に来ていた、Aやのさんが
Aやのさん「まぁ、あのスピカの方々はあぁ仰っていましたが、えぇっと・・・、似合って・・・ますよ?」

きりんの部屋ではAやのさんを推していきたいと思いました、そして、僕の髪型はスベッテないと思いました、スベッテ、ない。むしろナウイ。

・・・ナウイ、今回は最近の句集について少し書こう、というかつぶやこう。時評とかはなんだか向いていないので、最近読んだ好きな俳句を紹介します。

そんじゃ初めはこれだー!

興梠隆さんの句集『背番号』
とても面白いと評判なので、僕が改めて言わなくて良さそうだけど、僕が面白いと思った俳句を

つばくろや上手に曲がる路線バス

燕が可愛い、バスまで可愛い、〈上手〉の手柄でしょうか

春の月観たかもしれぬ映画借り

わかる、わかる、『青い春』とか『ピンポン』とか『キッズリターン』とか『スタンドバイミー』とかでしょ?(違うか)

三月やふんころがしを飼ふ少女

わかる、わかる(すみません、嘘)、子供は変なもの大好きですからね、僕は幼い頃、カレーパンマンがピューッとカレー吹くところが好きだった(関係ないね)。

つながつてパン焼き上がる春の雪

もこもこのほくほく

春昼の鳥の卵の図鑑かな

鳥じゃなく?鳥の卵?だったらなんだか見てみたい、ちなみに僕の部屋にはエジプトファラオ図鑑があります(関係ないね)。

春の闇より側転でやつて来る

ハハハハと言いつつ、素晴らしい笑顔で

原作になき薔薇の名を加へけり

薔薇の名をね、加えたのさ、とカッコよく言ってみたい(そんな文豪ゴッコがしたい)

柿若葉顔を叩いて洗ひけり

僕にもこんな清潔な朝が来れば

西瓜提げ腕の長くなりたるや

シジマール(古いか)

焚火してとんちんかんな涙出て

ここで〈とんちんかん〉が出てくるなんて、素晴らしいセンスですね

そこを、おぉ!そう来る!?と嫉妬してしまうような楽しさが詰まった句集でした。
『背番号』読んでるなんて麒麟さんナウい!髪形もイカしてる!

えへへ、そう?

はい、次いくよー
きっとあちこちで読まれるし語られるので止めようかと思ったけど、読んで行こう、そう、山口優夢句集『残像』
僕の個人的な好みですが、僕は賢そうで、ドヤって顔をした句があまり好きじゃなく、阿呆な俳句を愛します、ただ阿呆なだけではやはり駄目で、優夢氏の句のいくつかはそんな僕の臭いストライクゾーンにスケベに食い込む。

前髪の中の目玉や冬ざるる

所謂鬼太郎的な、冬ざるるで感じがジワット出てます

冬眠の骨一度鳴りそれつきり

コリっとうまい具合に聞こえる

腕に腕からめて春は忌日多し

楽しそうじゃないか

梅雨長し髭はつぶやくやうに生え

剃りたまへ

秋雨を見てゐるコインランドリー

秋の雨で思い出す句は耕衣のコーヒ店の句とこの句、と思うとこの句はすごい

石蕗の花遠くの人はしあはせさう

君こそ、しあはせさうだよ、良いな、しあはせさうって。

卒業や二人で運ぶ洗濯機

しあはせさう

ちちははに少しおくれて初笑

しあはせさう

野遊びのつづきのやうに結婚す

しあはせ草、じゃない、しあはせさう

と、ちょっとふざけてみたけど、この句集、184句しか入れなかったところに驚きました。厳選したんだ!?わっ、と書店で手にとって驚いて、なんだか悔しくて(内容が良かったからね)一旦棚に戻したのを覚えてます(後日やっぱり欲しくって買いに行きました)、彼は見た目も可愛く人に愛される俳人で、先日も若手俳人が集まり『残像』の読書会があったそうだ、あぁうらやましい。
『残像』読んでるなんて麒麟さんナウい!髪形もイカしてる!

えへへ、そう?

次はこれじゃい!
天野小石さんの句集『花源』
綺麗だね、なんて言葉はしばしば俳句の世界では褒め言葉にならない事もありますが、度が過ぎれば褒め言葉になる、美し過ぎる、小石さんの句集の美意識はちょっと普通ではない、こんな汚い部屋に住んでいる麒麟がうっとりしてしまうぐらいだ、大きな声で言おう、小石さんの句集綺麗、麒麟の部屋汚い(掃除しろよって感じだね)。
そんじゃ句を読んでいきましょう

水底の砂を揺らする春の月

水も砂も空気までも綺麗

花びらを喰らひ朱鯉となりにけり

朱鯉があんなに赤いのは、花びらを食べたからよ、綺麗

持ちあるく鏡に雨や夏野原

鏡に残る滴も綺麗

谷底へゆつくり墜ちてゆく扇

わー、あー、やー、とゆらありと墜ちていく扇の美しさと言ったらないよ

その後の露の深さの廃寺かな

小石さんが詠めば、廃寺がまさかの美しさ、どこかこの世じゃないかのようです

悪知恵を授けて行きし褞袍かな

何かここから物語が始まりそう

また別の雪景色ある目覚めかな

ぼんやりしながら、あぁここも雪ね、と、美し過ぎる句

いくたびも鈴虫の鳴く逢瀬かな

僕がしたいのはデートじゃない、逢瀬だ

亀と亀ぶつかつて春惜しみけり

うふふと眺める視線を感じる

蜜豆のテーブル小さき神田かな

年季の入った小さなテーブル、この蜜豆は上品で美味しそう

紫がわたしに似合ふ星祭

と言い切るぐらいの女性は素敵だ

磨かれて露のこぼるる猟具かな

下五の猟具、これ以上の言葉はちょっとないんじゃないでしょうか?儚さと美しさと現実感が交差している。

ぎゆつと結ふ恋のみくじや初燕

恋のみくじはぎゆつと結え

剥製の大蜥蜴より炎ゆる舌

剥製にしてこの迫力、炎ゆる、が妖しく美しい

秋扇や唐史にあまた悪女伝

悪い女は美しい、秋扇と置けば、オホホホホと聞こえてきそう

黒髪は血潮の果たて雪舞へり

深水の美人画を想像しました、美し過ぎて、どこも絶対動かせない。

個人的には今年最注目されるべき句集の一つかと思います、なんせ17年分の作品が詰まった第一句集です、そりゃ良いですよ、もう一回言おうかな、小石さんの句集綺麗、麒麟の部屋汚い(掃除しろってね)。
『花源』読んでるなんて麒麟さんナウい!髪形もイカしてる!

えへへ、そう?

そうですとも!

ほんとはまだ何冊も書きたい句集があったけど、長くなったのでまた、今度髪でも切ったらまた書こうかな、そんじゃ

バーイ