ナウいきりん 2

『俳コレ』(2011邑書林発行、「週刊俳句」編集部編)

最近、盆栽が好きだ、ちょっと前は金魚が好きだった、飲み屋でゲソを食べながらくいっと一杯やりながら、隣のテーブルの女の子達が合コンの話で盛り上がってキャイキャイ言ってるのを、ゲソをもぞっと食べつつ、若いのぅ、おんしらは、と両目を龍馬的に細めながら、またくいくいっと飲む…、恋人に今度寄席でも行くかい?と言うと嫌~な顔をしよる、そんなら盆栽園に行こかいな、と言うとため息をつきよる…、仕方がないので得意の俳人モノマネと、最近覚えた「ありそうな落語」というネタを披露して機嫌をとろうとして…
あれ、ん?うーん、もしかして…ぼ、僕枯れてない?あれ!?枯れてな~い!? わー、やだやだ、きゃー、これゲソじゃな~い?これ辛口の日本酒じゃな~い?
なんかこうヤングな事言ってみよう、えと、最近ニコルちゃん(KARA )が好きだ、いや、なんか違うな、あ、最近の本とか読もう、知的に行こう、えと鞄には…、『俳コレ』!あ、ナウいじゃん、むしろ『俳コレ』読んでる麒麟さんナウいじゃん、という事で『俳コレ』の中の麒麟的オススメ、阪西姉さん、うさぎ姉さんをやろうかな、仲良くしていただいてるから書くわけじゃないんですが、正直僕が『俳コレ』で特に楽しみにしてたのはこの二人です、さ、今から読むので、僕もどんな句があるのか楽しみです、さ、ナウい麒麟さんが読みますよ~

それでは先に太田うさぎさんの俳句を見て行きます、うさぎさんの俳句はタフさと繊細さとヒトネジリ違う面白い発想が武器です。

異論あり冷やし中華の辛子ほど

うさぎさんは俳句の話をする時、声をあげて笑ったり、納得がいかない時はちゃんとプンスカ怒ったりする、僕はそんな熱を持っている人が好きだ。

草刈つて月はあらはに上がるかな

ぐーんと大きな月があがる、とっても気持ちが良い

老鶯の整へてゆく水景色

大きくて静かで繊細でもあるのがうさぎさんの俳句の魅力

胡瓜揉み庭にあめかぜ激しかり

ぎゅっぎゅっ♪雨に対して、も~、と言ってる様子なんかも楽しい

スカートのちよつとずれてる昼寝覚

このちょっとを詠めるかどうか、うさぎさんは余裕で詠んでしまう

歳月の流れてゐたる裸かな

シャワーの水をハジキタイ

遠泳のこのまま都まで行くか

すんごい泳ぐようさぎさん、都が何か美しい灯のよう、あー、こんな風に詠めるんだなぁ。

鰭たたみ金魚まつ直ぐ浮いてきし

大きくて丸い金魚がふわぁ~と浮いてくる、このふわぁ~感はなかなか出ない

すててこやお城に赤い日が沈む

なってみたいものの一つが、すんごい駄目なんだけど、可愛い王様

ぐんぐんと母のクリームソーダ減る

このぐんぐんがうさぎさんの力、読むと元気が出てきますね。

路地を飛び出して西瓜の匂ひの子

西瓜の匂い!!元気で懐かしくて、過ぎ去ってしまった何かを思い出して、ちょっとだけ寂しい不思議な句、この句は特に大好きです。

電話して菊人形の裏に居り

タハハ、リアルですねぇ

着膨れて大きな声になつてゐる

わかる!なんかわかる!この「なんか」を句に閉じこめる事ができるのがセンスです

寿司桶に振り込む雪の速さかな

雪のスピードが清らかで気持ちが良い、世界が清潔に見える

なまはげのふぐりの揺れてゐるならむ

こんな俳句が回ってきたら、嬉しくなっちゃいます、きっと嬉しくなって笑っちゃうなぁ。

あさはかなそれも恋なり春スキー

うさぎさんには「お馬鹿」を許してくれる優しさと度量がある

時速百キロつぎつぎと山笑ふ

現代的だけど、昔からの自然をきちんと大きな景で詠む、なんというかうさぎさんの俳句というのは、ぴかぴかした綺麗なお寿司のような、宝石のような輝きがある。

うさぎさんの俳句には色んな方向があるので、百句に絞るのはきっと難しい作業だったと思います、それをこれだけいきいきしたものにできたのは、一平さんの手腕だと思います。
僕はうさぎさんの俳句も選も人間にも、非凡なセンスを感じます、そういったものが売ってるなら絶対買いたいけれど、売ってないからこそ、ぴかぴか光ってるんでしょう、はい、まとめ!

うさぎさんはぴかぴか光ってる!

ここテストに出るよ!なんて

次は今年特に大活躍だった阪西敦子さん、さ、読んでいきましょ

獅子舞の押し広げたる天地かな

いきなりデカッ!めでたっ!!

初鴉道うつとりと眺めをり

うつとりがどうにもこうにも美しい

人日の顔のすみずみまで洗ふ

普通の事を、もうちょっとだけ攻める、ほら、こんなにいきいきした句に

水仙の正面に出る上り坂

水仙で正面で上り坂で、うわぁ!?普通なのにすんごい良い、で、多分これ意識せずあるがままを詠んだ句だと思うんですよ、だからね、そういうのが非凡なんです。

家らしきもの人らしきものに春

なんだかんだの希望がある、うん、明日も元気にやっていこう、ここに何の季節を置くかによって人柄が出ると思う。

立子忌の坂道どこまでも登る

「しんどー!もー!」と言いながらも明るく坂を登るのが阪西さん、きっと阪西さんはしんどくても笑顔で登る。

春寒や壺に見られてゐる我ら

と、タハハと笑えるのが強い

受験子のみんな左へ折れにけり

みんな受かれ!とか無茶だけど優しい事を思ってそうな句、不思議なのはそんなのどこにも書いてないのに、やっぱりそんな気がするところ

囀や難しきことから忘る

なんて気持ち良いんだろ、デッカイ!心が西郷さんほどデッカイ!

唐揚の影おそろしき涅槃かな

もう面白くって面白くって、タハハ、唐揚って姉さん…、攻めるなぁ

先生と叫ばれてゐる立夏かな

叫ばんでも、って可笑しさにちゃんと気が付いてしまうのが阪西さん

金魚玉見ながら水を飲んでゐる

これ説明しにくいけど好きなんですよ、美味しそうで、楽しそう、水なのに、うん、「楽し」ってのが阪西さんの俳句にはあちこち散らばってます、だから読み手も楽しくなってきます。

溺れゐるごとくに西瓜食べてゐる

「うまー」って声が聞こえる

約束のベンチに秋の蚊が待ちぬ

この俳句を村上さんが熱いお茶飲みながら「むっ」とか言いつつチェックされたとしたら、なんか嬉しい

満月の前とて電話かけて来し

「あ、ほんとだー、わー!」と元気よく電話に出てくれる様子が見える

焼藷や大きな仕事ゆるゆると

自信満々、それをね「焼藷や」で表現できる作家、他に居ますかね?こんな俳句見ると嬉しくなっちゃいますよ。

焼藷の大きな皮をはづしけり

僕の大好きな句、なんでもないけどしんごくデカイんです、きっと本人にこの秘密を聞いても「焼藷好きなのよー」ぐらいしか答えてくれなさそうだけど。阪西さんの焼藷は大きくて良い感じに焼けてて、甘くてホカホカ、藷褒めてんじゃないですよ、俳句ですよー。

東京で色んな俳句の若手も見たけれど、その多くの人からは非凡で鋭い秀才を感じました、ただ、僕が天才を感じるのは、今のところは阪西さんだけです、案外、外れてないと思いますよ。
立子のようなつる女のような、そんな天才を感じるんですよ、面と向かっては言わないけど。

さ、どうでしょ、別に二人から一杯ごちそうになろうと思って書いたわけじゃないんですよ、全部本音、うん、「俳コレ」のおかげで良い俳句がたくさん読めました、そんじゃ、また
バーイ!