京童さんをどうしょうかー 1

まさか九回も続くと思わなかったけど、植物祭が終わったので次は何しようかと、ぶらぶらしているうちに一冊の句集を手に入れました。

山本京童句集その名もまんま『京童句集』、今回から読んでいきます、さて、どうです?決めつけちゃいけませんが、知らないでしょ?
三省堂の『現代俳句大辞典』を参考にしますと、山本京童さん(?~1936)は逓信省勤務(風生と一緒ね)、東大俳句会に参加し、武蔵野探勝会に熱心に参加しています。

古本屋でペラペラめくると…

釣堀に烏賊あらはれて烏賊泳ぎ

農園の長き茄子にあきれたる

塗りたての閻魔さまなり詣でたる

手荷物に気をつけてゐる暖炉かな

等の句が目に飛び込んできました…、え、え?何?面白いじゃないか!わかった、京童さん、まかせろ、僕がやるぞ、まかせとけい!と迷わず購入したわけであります。
で今日一日がっつり俳句文学館で調べてきたので、それもちょいちょい混ぜながらじっくり京童さんの俳句を味わっていきましょう、僕全然関係ないんだけど、京童さんの俳句が少しでも広まれば嬉しいなぁ、ほんとほんと、それじゃあ読み進めますよー。

ちなみに読みやすいように(ほんとは打ちやすいため)、新字体に直してます。

初富士の観音堂に参りけり

昭和2年、最初の一句です、うん、最初の一句です、素直で良いじゃないですか

強東風や砂の足あとすぐ消ゆる

二句目、うん、素直だね

狂言や桜を中に楽屋幕

三句目、す、素直

柔らかき筍藪の土ふめり

素直な事は良い事です、今週のテーマは「我々がうしなったもの、素直」でいこう、でもちょっとほんとだなぁ。

芍薬を移し植ゑたる蕾かな

うふふ、咲くと良いね

笹鳴や庵の山徑掃いてあり

掃いてあったんです

大丈夫、面白くなってくるから、心配するな!どんと付いてきなさい!

近道の梅案内や畦づたひ

昭和3年最初の句、ほら、ちょっと面白くなってきた、これからこれから

海風にいたみし藪の椿かな

海が近い

登り来し椿のかげに憩ひけり

疲れた(僕じゃなくて)

門前に苗代出来しお寺かな

ほのぼのしたって良いじゃない

芍薬の雨に濡れたる重みかな

良いじゃないですか、よく見ろと言われてよく見て俳句を作る事は良い事です、芍薬が良いです、牡丹じゃね…

提灯をくぐりて月を仰ぎけり

ぽっとね、ほら、月、多分大きな月

菊枯るるところに近き茶店かな

俳人なら枯菊でパフェぐらいいけなくちゃいかんのです

よし次から昭和4年だ、どんとこい!

柵の外牧を焼く火の延び出たり

わっ

石象の脚あたたかく凭れけり

ふぅ

倒れ木の下に音ある泉かな

とくとく

噴水に濡れたる芝をふみにけり

ふんだよ

藤の門噴水見えてあけてあり

あけたよ

遊船について泳げる犬のあり

前書はテームス河上流、ちょっと、面白いじゃないですか、健気でおバカで可愛いじゃないですか。

岸草につかまり泳ぐ女かな

今度女来た!たくましいわ…

飛行機の音やみしより盆の月

時代は昭和4年だからねー

濁水はしれる崖の葛の花

見つけたって話

烏瓜落ちたるままの住居かな

でも普通そうなんじゃない?

蔦紅葉潜戸ありてひらきけり

よいしょ、蔦紅葉が良いじゃない

さて、昭和5年の俳句だぞ、この辺から、この辺から面白いからね、ね!

春の日に似て凍蝶のあがりけり

ほれ!どうだ、良いでしょ!?ここまで読んでくれたみなさい、ほら、京童さん、良いでしょう?ちなみにこの句は世間的にも京童代表句と言えると思います。これは虚子編歳時記の凍蝶の例句に挙がっています、ちなみに凍蝶の例句四句中二句が京童さん!すごいねー!はい!覚えましたか?凍蝶と言えば京童さん!なんとこの句はホトトギス雑詠句評会評にも挙がってます

以下は風生の言葉

全くその旨さに敬服しながら。そばに居た秋桜子君と耳語して「おそろしくうまい人がいる」とか、「こんな句を作るのは一体何びとだろう」などと話合って居た事だった。

以下は虚子の言葉

「春の日に似て」という言葉も無造作なようであって然も置き得て妙である。

ホトトギス雑詠句評会に一度でも挙がってみたいもんだなぁ、京童さん、高い評価を受けています、虚子からは可愛がられてたんじゃないでしょうか?武蔵野探勝会のメンバーの中では、結構な人気者だった気がします。

武蔵野探勝の五回目に赤星水竹居が

今日は第一たけしさんが京都旅行で居ないし、それに風生、青邨、京童、花蓑などの常連が何れも公務の為に欠席で、聊か淋しさを感じ居た處に、

という一文がありますので、京童さん、いつも居る顔触れの一人だったんでしょう、ちなみに僕が調べた記録では、一回目(昭和五年八月)に参加し、五十七回目(昭和十年四月)を最後にするまで吟行にたびたび参加されてますね、亡くなるのが昭和十一年、七月ですから、晩年まで熱心に武蔵野探勝に参加しています、機会があったらみなさんぜひ武蔵野探勝読んでみてください、みんなのびのびしていて実に楽しそうですよ。

凍蝶のほろほろあがる茶垣かな

ほろほろ!?はかなげな命を感じます、うん、ほろほろベストです。これも虚子編歳時記に載ってますよ。

凍蝶のゐたる干菜をはづしけり

これは歳時記には載ってないんだけど、さっきまでの二句に劣らぬ良い凍蝶かと、人間やはり褒められると伸びます

ころころと湯のわく音の梅の宿

だんだん自在になってきました、ころころって可愛い、梅の宿ってのが余計に可愛いなぁ

せせらぎに堪へてのぼれる田螺かな

か、可愛い、健気だわ

生ひ出でて大いなる葉の水草かな

大胆に詠むコツをつかみ始めましたね

さ、ここらへんから面白くなるんですが、また来週、京童さんまだこんなもんじゃないのでまた見てね、すごいんだから、そんじゃ、ばーい