『前略十年』を読んでみた

高柳重信『前略十年』 昭和48年端溪社刊行

特に待ち合わせをしているわけでもないのにばったりとよく会う(飲み屋で)のはホトトギスの敦子姉さん文子姉さん、一緒に句会をやった数より、はるかに多いのはなんとなく一緒に飲んだ数で、親しみを込めて影では「敦ネェ」「文ネェ」とか呼んだりしている。

この二人の姉さんとは俳句に対する笑いのツボがよく似ていて楽しい

こう、なんというか、風が吹いて小枝がぽて、と転ぶ、みたいなのが面白いのだ(伝わりにくいと思うけど、そういう俳句が最上だと言ってるわけじゃないんです)、西洋のシンデレラみたいな城じゃ面白くなくて、平凡極まりない、日本の城とかが面白い、ショボい寺とかも楽しい、坊さまが好き、大輪の花より蔓がくりくりっとなっている様が可笑しい、沼とか苔とかが可愛い、ケーキより饅頭、胡瓜、いやもうちょい、瓜とか見ると可笑しい。和風であれば良いわけではなくて、ちょっとへうげた感じが好きなんです。

↑僕は私生活もこんなだけど、二人の私生活はもうちょいシャレてると思うので、これは俳句の上の話ね

麒麟「ねぇねぇ、この前こんな句見つけたんです、タハハ~」
文姉「アハハ~」

とか言ってると敦子姉さんは嬉しそうに

敦姉「病気です、アハハ~」

と「へんな」好みを愛する事を「病気」と嬉しそうに言ってまた喜ぶ、だからまぁ虚子なんか大好物なわけです。

でも、まぁたまにはケーキなんか食べて長い名前の紅茶なんか飲んでみたくなる日があるように、カッコいい俳句も読もうかしらん、という日もあるんです、という事でやっときた本題、今日は重信を読みましょう、重信もね、あまり難しく読まなくて良いと思うんですよ、もっと楽に読めますよ、と、それじゃ読もうかね

夜の日比谷意外に暗き朧かな

早く帰りなさいね、少年重信の事を思うと可愛い

金魚玉明日は歴史の試験かな

ちゃんと鑑賞をすると、歴史に未だ見ぬロマンを感じるとかになるのかな、麒麟風なら「まぁ、可愛い、プリン買って来てあげる」というところかな

ビール飲めぬ大学生の一人なりき

このちょっと大人ぶった感じがプリティじゃありませんか、ちなみに高知大(波高き我が母校)では四月(僕が一年生の頃ね)に救急車三台来たって聞いたなぁ…、ビール飲んで、苦くないもん、なんて綺麗な肌で言ってみたいけど、色んな事がもう遅いのさ

木の葉髪女給よし子と名乗りけり

前書きは茶房スネイク・ヒップとあり、またすごいとこで飲んでますね

「アタシ?アタシはよし子、また来てよ、サンビスしたげるからさ」

古き良きスネイク・ヒップに乾杯

春光やキリン蕩児に似て歩む

違う違う、僕じゃないよ、キリンねキリン、僕?僕麒麟

秋さびしああこりやこりやとうたへども

どうにもならんねぇ、と言う時俳人は舌をぺろんと出してこの句を思い出すんです

マダムX美しく病む春の風邪

おぉ麗しのマダムX、パンチパーマで虎の絵のTシャツとかでは絶対あってほしくないマダムX

あ・あ・あ・とレコードとまる啄木忌

この句から不吉な感じがするか面白く感じるか、僕はこの頃は可笑しい、あぁこりゃこりゃ

ふりかぶる此の必殺の蠅叩

重信なら、スパァン!と鋭くいきそう

七月の塀の落書「アキコノバカ」

「ホントハスキヨ」

われら永く悪友たりき春火鉢

こんなスタンドバイミーな時代に戻りたい

ゴッホの糸杉 東風に逆立つ我が蓬髪

重信みたいに長髪にしてみたいけど、僕は髪がくねくねしているから無理だなぁ

きみ嫁けり遠き一つの訃に似たり

泣かないぜ、わしも男じゃ

しやつくり 何かがはじまりさうな夜

大好きな句、もやもやとした「何か」を想像しましょう、しやつくりが効いてるというのは変な表現だけど、効いてるよね

酒を下さい 夜の調律が出来ません

僕にも下さいきりんのへやが出来ません

あぁ久し振りに読み返したら面白かった、大学生の頃からずっと僕は重信のファンなんです、胸に抱えて『前略十年』を古本屋で買った時の興奮が忘れられないなぁ…。

僕も夏で29か、楽しみだぜ、ほんとほんと、そんじゃ仕事行ってきます

バーイ