見た事も行った事もある、実家だもん。後半戦②、もう尾道関係無い気がするの巻

「」への長い長い序文

私は長らく能村登四郎の「沖」という雑誌に投稿していたが、私の俳句にはだんだん合わなくなって退会している。『野干』『婆伽梵』という句集は、やはりどうみても伝統派の俳句とは見えなかったろう。そんなあるとき、加藤郁乎が「筑紫磐井は私の弟子である」と言い出した。入門をしたこともないし、依頼したこともないわけで、当人もびっくりした。そのうち、沖積舎から『加藤郁乎俳句集成』が出た時にあとがきの依頼を受け、長い長いあとがき<解説「カトーイクヤのいとも豪華なる時?書」>を書いたので、弟子としての務めを果たせたのかもしれないが、やはり不可解なことではあった。その後郁乎とは、黛まどか、辻桃子が親しくしたから私が弟子である必要はなくなったかもしれないが、何となくそうした風評は続いている。

麒麟「前回この辺まで読んだっけね」
続きを読みましょう。もう尾道どうのとかホントとか嘘とか文章がヤバイから石碑にしちゃった、とか、もうどうでも良いレベルなのです。

ある時、高山れおなが、磐井さんは郁乎の弟子ですよね、と確認した(否と答えたのだが)うえで、能村登四郎の弟子の筑紫磐井ではちょっと困るが、加藤郁乎の弟子の筑紫磐井なら師系に入ってもいいな、と言って、いつ頃からかかってに私を師匠と呼び始めた。弟子として許したことはない。つまり、私の意志を全く無視して、加藤郁乎は私を弟子といい、高山れおなは私を師匠とよぶ、私は何の意志もないままにサンドイッチ状態で、郁乎――磐井――れおなの師系を作られたのである。もっともれおなは最近、生きているうちに自分の名前の付いた賞(加藤郁乎賞)を作り自分が選考するなんてとても風流とはいえないと言って郁乎を批判しているから、そのうち私もれおなから破門されるかもしれない(実際ホトトギスとの交際が過ぎると言ってしばしば諫言されている)。弟子が不肖の師匠を破門すると言う変わった事件も世の中にないわけではない。

麒麟「…なんだかすごい事が書いてあるね」
久留島くん「尾道関係無いですね」
麒麟「…うん」

さて何でこんな話をしているかといえば、西村麒麟から俳句を所望すると言う話が来たからだ。私は弟子でなければ俳句を与えない(もっとも弟子であろうがなかろうが今まで一度も俳句を与えたことはなかったのだが)、だから弟子にしてやろうと提案した。もちろん本人の意向を無視して弟子にする加藤郁乎の例もじっくり語った。

敦姉「アハハハ、やばいねぇ、やばいねぇ麒麟ちゃん」
村上さん「麒麟ちゃん、思いきりましたねぇ」
麒麟「ねぇねぇ、これ、ちょっとヤバイかなぁ、師匠読むかなこれ…」
相子さん「ヤバイよぉ?読むよ~♪うちなら有り得ないわ」
麒麟「オオオォォ…」
久留島くん「あ、麒麟さん!!あ、また吐いた!?汚いっ」

磐井「ついては、弟子になった記念に師匠の1字を名前にあげよう」
麒麟「?」
磐井「西村磐麒麟(ばんきりん)としてあげようか」
麒麟「それは・・・・・・・・」
磐井「西村麒麟井(きりんせい)でどうだ」

敦姉「可愛がってもらってるじゃん♪」
村上さん「どっちにするんですか?決められないなら多数決で決めましょうか?」
麒麟「いや~、勘弁してくださいよ~」
敦姉「あら、麒麟ちゃん、磐井さんの申し出を蹴るの?」
麒麟「おおお、師匠~、ゲボ」
村上さん「今日はどうせよく吐くと思ってビニールシートと盥を用意してみたんです」

敦姉文姉二人同時に「用意が良い!」

扇をパタパタさせながら満足げな村上さん、吐いている麒麟を見ながらドン引きの越智くん、赤ワインに手を伸ばす松田さん…。

麒麟「・・・・・・・・ちょっと・・」
磐井「では秘中の秘を明かそう。私の名前は一応筑紫磐井だが、世の中では影で私を呼ぶ時「磐井め」と言っている。座談会で私の名前が例に挙げられるときはだいたい速記では「磐井め」と呼ばれているのだが、編集部が気を利かして「磐井さん」と修正してしまっているらしい。「磐井め」が私の隠れた俳号なのだ。「め」は軽蔑の助詞か接尾詞になるわけだからこれを上げよう。西村麒麟め(きりんめ)でどうだ。」

敦姉「ヨヨォ♪きりんめ!」
村上さん「おめでとうございます、きりんめ、ふふふ」
麒麟「ちょっ…、何面白そうに言ってんスカ」

麒麟「・・・・・」
磐井「どうせ、あなたはほっておいても「麒麟め」と呼ばれそうだから、この際、この「め」は師匠から頂いた字ですと言えばよいのだ」

文姉「きりんめ♪」
レーナ姉「きりんめ♪」
相子さん「きりんめ、あはは」
松田さん「きりんめ~♪あはは~」
村上さん「きりんメ、うん、メを強く発音すると良いですね、ふふ、きりんメ」

麒麟「・・・・・」
磐井「さあ決まった。それでは、俳句を詠もう。ただ最近俳句の依頼が来ると、長い長い前書きを付けることにしている(参照「詩客」<かげろうの詩―やや長い前書きのついた俳句><長い長い前書きのついたメランコリーな作品>など)。この長い長い前書きを付けた俳句を上げる。弟子入りの顛末も含めて書いてあげるから、これを序文にしなさい。」
麒麟「・・・序文ではなくて俳句がほしいんですが・・・」
磐井「弟子の分際で生意気を言っちゃいけない。それからいっておくが、あなたの「詩客」に連載した<「麒麟から御中虫への手紙だよ」>も、「スピカ」に連載した<きりんぽろぽろ>もまことに面白いが、幸いなことにというか残念なことにというか、俳句よりはるかに面白いのだ。まあ、高山れおなの『荒東雑詩』の前書きも、私の長い長い前書きもそのきらいがないわけではないが。」
麒麟「だけど何で序文をもらわないといけないんですか(泣きべそ気味に)」
磐井「いずれ俳句は滅ぶ。俳句は滅ぶが、あなたの書いた注解や、れおなの書いた前書き、私の書く序文が前人未到の文学として残るかもしれないじゃないか。」
麒麟「・・・・・」
磐井「セルバンテスはけっして世界文学に残すため『ドン・キホーテ』を書いたわけではない。世の中をおちょくるために書いたのだろう。それが、ドストエフスキーによって過剰な評価を受けてしまい世界最高の小説となってしまった。そうならないとも限らないじゃないか。ついでに、序文の題名も、<「」への長い長い序文>としておく。「スピカ」の<もりもり麒麟大作戦>の時も同じく「」に適当に名前を入れたまえと言ったら面白い名前を入れてくれたから、こんどもそのやり方で行こう。」

麒麟め「…僕、実作もなかなかイケるよね?ねぇねぇ?」
久留島くん「…えぇ、実作も良いんじゃないですか、えぇ…」
麒麟め「ねぇねぇ、僕の俳句、そんなに悪くないよね?ね?」
敦姉「…うん」
文姉「…うーん」
相子さん「…好きな句も、あるよ、うん」
村上さん「精進なさい、これからですよ、あなたは」
越智くん「ミジメ~、フゥ~♪」
麒麟め「このヤろ、飲め!」
ヤツアタリとして越智くんを日本酒で沈めて再び続きを読む…

私には、麒麟のように短く簡潔な注解は書けないのでこんなことになってしまった。こういう経緯で麒麟(「麒麟め」だが)に尾道俳句を渡すことにした。私が行ったこともない尾道について(もっとも筑紫磐井にも「来たことも見たこともなき宇都宮」の名句がある)どのくらい嘘を書いてくれるかを楽しみにしよう。

尾道はまつぴるまなり嘘は実に

 平成24年8月13日 尾道にて      筑紫堂磐井 戯作

村上「…という事でした、ほんとにちゃんと俳句くれてるじゃないですか」
敦姉「タイトルはどうするの?」

麒麟め「見た事も行った事もある、実家だもん。」

久留島くん「うーん…」
村上さん「題も大切ですよ、あなた」

敦姉「…で、この石碑どうするの?」
麒麟め「兄さん(あに)いつもお世話になってますんで…」
村上さん「いりませんよ(美声)」
麒麟め「…、実家に…送ろうかな…」

尾道は千光寺山に設置されたこの磐井さん作の石碑、皆が読めるようにと、村上さんの筆によって解説文が書かれ、今では尾道と言えば麒麟め、と呼ばれるようになったわけでもないでもない。最近はこの石碑に苔がついたりキノコが生えたりと、ちょっと味が出ています。たとえ西村麒麟めは滅びても、この石碑は残るでしょう、重いし。

めでたしめでたし…

…、今だかってきりんのへやでこんなに苦戦しなかなか更新しなかった事があるだろうか…、磐井さん、さすがに大物でした。リアルにどうしたもんかと知恵熱が出ましたよ…。あの、今度おごっていただく約束、僕は覚えていますので、どうかよろしくお願いします。

えーっと。一応言っておこうかな、いただいた作品や磐井さんの文章はもちろんリアルですが、残りはほとんど、あえて、あえてここでは、フィクションであると言っておきます。

登場させたほとんどの人に許可をとっていません。最近村上さんから返信がありません。

しばらくお詫びに徹しようかと思います。僕の周りの皆様、いつもありがとうございます。読んでくださっている皆様とスピカ三姉妹様、なかなか更新しなくてすみません、苦戦したのであります。
快く作品をくださった皆様、わがままに付き合っていただき感謝感謝であります、とくに春休さん、たくさん広島紹介をありがとうございました!

来週からやっと、やーっと、通常に戻ります。さ、何やろっかな

そんじゃ、ばーい