2012年9月18日

石に彫る名前 夏落葉は海へ

訪れたのは摩文仁の丘。第二次世界大戦の沖縄県最大の激戦地といわれており、現在は平和祈念公園として歴史を伝える資料館や慰霊碑などが置かれている。海に向かって建てられている百基以上の石碑には、どれにもたくさんの名前が彫ってある。国籍や立場に関係なく、沖縄戦で亡くなったすべての人たちの名前があるのだという。ここにある名前がすべて、それぞれに人のこころと肉体をもっていた。アキやマサ子という名前からその肉体にさかのぼろうとしても、私の意識はあるところでうすれて消えて、強い風に流されてしまう。その風は、慰霊碑に木陰をつくる木々の夏落葉を、海へと運んでゆく。

公園の入り口に大きな電話ボックスほどの建物があって、そこでは機械に名前を打ち込めば、その名がどこの碑に彫られてあるかが分かる検索システムが用意されていた。なにやら打ち込むアサトくん。「ありました、僕のひいおばあの名前です」。