ふらんす堂 句集「赤のシリーズ」

昨年から新たにリリースされた、出版社ふらんす堂の句集シリーズ、その名も「赤のシリーズ」。

ふらんす堂HP 赤のシリーズ

ふらんす堂編集日記「抒情を生むもの」2015年4月20日

四六版の薄表紙の造本は手にとりやすく馴染みよく、折り紙をテーマにした装丁は読む者に優しい印象を与えてくれる。
この赤のシリーズ、私が栞文を書かせていただくというのもコンテンツのひとつ。
まだ人の目に触れていない句稿をめくりながら、その句集の世界に遊ぶ時間は、だれにも邪魔されない草原に寝転がって流れゆく雲を見ているようで、とても楽しい。すでに6冊刊行、新たに数冊も刊行予定とのこと。

瀬戸口靖代『精霊舟』
燕来る水に放ちて牛蒡の香
父母なくば遠流のごとしゆすらうめ
石鹸玉吹く子に父の舟帰る

吉澤やす子『しもつかれ』
霜晴や戸外に寝かすしもつかれ
ヨガ教室てんたう虫の迷ひこむ
針千本野に紫雲英草何千本

石井美智子『峡の峠』
苗札やひとつ向かうの畝に母
吹かれても草を離れず秋茜
星散の峡の灯や晦日蕎麦

いすみ二條『空へ』
初鏡眼の奥深くわれは棲む
縄跳びの縄の消えては現れぬ
十かぞへ手毬を胸にふかく抱く

小林すみれ『星のなまへ』
秋淋し灯台守のごと淋し
べうべうと啼きて銀河の濃くありぬ
まつさきに五月が好きでありにけり

尾崎淳子『只管ねむる』
初蝶がキスしてスープこぼれたよ
かなぶんにシャツつかまれて泣いてはる
味噌汁も冬も好きです啄木も