よく聴けば孤立無援の鈴虫か
93・4キロ(9月12日計測)
森田童子が好きだ。
ブルーハーツもいいが、森田童子もいい。
高校2年の冬、人の死や人との別れの中で僕をなぐさめていたのは、妙にすましていたりおどけていたりするような俳句ではなくてむしろ死を呼び込んでしまいそうな彼女のか細い歌声だった。
「孤立無援の唄」なんて特に好きだったのである。「君は難しい顔して立ち読みしながら本を盗んだ ぼくの自転車のうしろで『孤立無援の思想』を読んだ」という歌詞にひかれて高橋和己の『孤立無援の思想』を読んだが、とにかく一文が長くて隙間がなくて、何も分からなかったのを覚えている。
「窓ガラス空けると無難にやれと世の中が顔をしかめてる」「どうして生きていいのか分からぬ僕が畳の上に寝そべっている」。歌詞の言葉だけ書き抜いても、それは入れ物ばかりだから唄の輝きにはほど遠いのだけれど。
高校2年の年を越すのはちょっときつかった。森田童子の「ぼくたちの失敗」を主題歌にしたドラマ「高校教師」の再放送を見て、主人公の女子高生が自分に優しくしてくれた先輩の家に泊まった時、先輩がバスルームで手首を切って死んでしまい、そのあと迎えに来た恋人の教師の前で吐いてしまったその女の子を、教師が抱きしめているシーンが強く印象に残った。
僕はと言えば、予備校にわざわざ行ったもののそのまま授業を受けることはできないと、授業をさぼって自習室で自分の気持ちを大学ノートをめくりながら書き付けるばかりだった。僕は真面目な学生だったから、授業をさぼったのはそれが最初で最後だった。
でも、あのノートはどこに行ったのだろう。
あの日の僕は、僕だけが覚えていてやれるのに。そう思うから、僕はときどき森田童子を聴く。「あの時代はなんだったのですか、みんな夢でありました、みんな夢でありました」
(あの頃の僕は、60キロ代だったことを書こうと思ってたんだったのだけど、そういう感じに持って行けなかった)