2011年6月15日

狂ひ痩せてもはや鼠に見えぬなり

東京に来てからは鼠とは縁がないが、
少なくとも僕の実家の天井には鼠が走っていた。

妻よ天井を隣の方へ荒れくるうてゆくあれがうちの鼠か   橋本夢道

もう少しで寝入りそうになる頃合いになると、
たたたっと軽い足取りで走り回る物音が微かに聞こえていた。
時折、その姿を廊下で見かけることもあった。

実家には「ネズミホイホイ」が仕掛けられていた。
ある時、捕まったばかりの新鮮な鼠を鷲づかみにした祖母は

ぽきり

と首の骨を折り、実家の裏口から川へ抛り捨ててしまった。

小学生の頃、子どもたちの間で
ハムスターを飼うことが流行った時期があったが、
ついに実家では飼う勇気が出なかったことは言うまでもない。

以下、鼠の登場する句をいくつか。

春風や鼠のなめる角田川     小林一茶
震災忌路地を鼠の走りけり     鈴木真砂女
劇に出て鼠の役や卒業す     田川飛旅子

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