2014年8月4日

甲板を夕立の粒すべりゆく

メーカー :Delta
名   称: Amerigo Vespucci 1KS, Brue、限定 424/931
ペン先  :18K, M
軸など  :天然木(船の甲板)、シルバー925
吸入方式 :ボタンフィラー
購入日時 :2010/12/24
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 デルタはイタリアのメーカーでは後発の方で、1982年ナポリに創立された。アルチザン(職人)魂を注ぎこんだ品質の高い製品で知られる。南イタリアの陽光や果実を彷彿させる鮮やかなオレンジ色のレジンを削り出して作られた大ヒット商品「ドルチェ・ヴィータ」を発表して一躍世界市場のメジャーに踊り出た。
 アメリゴ・ヴェスプッチは15世紀のイタリアの探検家。コロンブスが死ぬまでインドだと信じていた大陸が実は新大陸だということを証明したため彼の名がこの大陸に付けられた。即ち南北アメリカ大陸である。だが実はこのペンの名前は探検家その人ではなく、彼の名を冠したイタリア海軍の帆船の方を指す。1931年に進水したというが現在も海軍士官候補生の卒業航海訓練船として働いている。とても美しい帆船でこれを記念したペンには他にモンテグラッパのものもある。イタリアの誇りなのである。
 このペンには色々と仕掛けがあって、例えばクリップの形が甲板長の使う笛を模しているとか、天冠にアメリゴ・ヴェスプッチ号の彫刻が描かれているとか、胴軸のリングには船体に使用されている字体と同じ船名が刻まれているとか…。だが一番すごいのはキャップに使用されている木材。驚いたことにアメリゴ・ヴェスプッチ号が修繕された時に取り替えられた甲板を政府から貰い受けたものだという。机の上に置かれたペンが実はかつて地中海を走り回っていたと想像するのは何とも楽しいではないか。