2014年8月7日

立秋
金星を吐き出し秋の海となる

メーカー :Marlen
名   称:The Birth of Venus、限定 12/18
ペン先  :18K, M
軸など  :樹脂、ハンドペインティング
吸入方式 :吸入式
購入日時 :2013/12/5
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 マーレンもイタリアのメーカー。ナポリ北部のアルピノに位置しマリオ・エスポジット、アントニオ・エスポジットの兄弟によって1982年に設立された、とある。社名は往年の名女優マレーネ・ディードリッヒに敬意を表したものと言うが、2000年に公開された映画『マレーナ』も同じ女性の名に由来する。つまりマリア・マグダレーナ=マグダラのマリアである。
 マグダラのマリアは新約聖書に登場し、最初にイエスの復活を証言したとされ(そう言っていない福音書もあるが)女性信徒ではイエスに最も近いところにいたと言われる。映画『ダヴィンチコード』ではイエスの子を産んだという説が取り上げられた。福音書に「罪深い女」と書かれたことなどから中世には聖女でありながら娼婦のアイドルとなる。ただし聖書はじめ後世の文献を含めても俗に言われるような「マグダラのマリアは娼婦であった」との記載は一切ない。
 この万年筆と直接関係のなさそうなマグダラのマリアのことを延々と書いてきたのは、実はこの万年筆のテーマである「ヴィーナスの誕生」とマグダラのマリアとは深く関係しているのではないかと思ったからである。ヴィーナス(ウェヌス)はローマ神話の愛と美の女神でギリシア神話のアフロディーテーに当たるとされる。有名なトロイア戦争は「最も美しい女神へ」と書かれた金のリンゴをめぐって三美神(ヘーラー、アテーナー、アフロディーテー)が争ったとき、審判者に選ばれた羊飼(実はトロイアの王子)パリスが「もし私を選んでくれたら世界一美しい女を与えよう」と約束したアフロディーテーの手引きによってトロイアから王妃であるヘレネーを略奪したことが発端となっている。
 西洋絵画の主題はローマ帝国の滅亡後、中世まではほとんどキリスト教一色、ルネサンス以降ようやくギリシア神話などが取り上げられるようになる。このペンの軸に職人の手で描かれた絵はウフィツィ美術館が所蔵しルネサンス絵画の代表とされるボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』である。キャップには作者であるボッティチェリの自画像も見える。
 時代は変わっても美しい女性、聖なる女性に対する憧れは常に存在する。中世ではそれがマグダラのマリアであり、古代とルネサンスではヴィーナスであったと言うことだ。
 ちなみに太陽系の惑星は皆ローマ神話の神々の名を持つがヴィーナスは金星である。