走る走るおたまじやくしも人間も  九鬼あきゑ

おたまじゃくしも人間も、せわしなく動いているのを「走る走る」と言いとめた。おたまじゃくしは「泳ぐ」だし、人間は「走る」というよりは「歩く」のほうが恒常的な行動である。しかし、あえて「走る」としたことで、疾走感や、すれ違ってゆく感じが、ぐいぐいと出てくる。「何のために?」という問いを振り切るように、走る、走る、私たち。

「椎」2014年8月号より。

ほうたるがおゐど豊かな土偶にも
音楽の降る駅頭や虹二重

にも惹かれた。土偶と蛍の時間の交錯。音楽と虹の絢爛。