2014年8月10日

王の墓ぬらしヒースの丘へ霧

メーカー :Visconti
名   称:Camelot, 限定 738/999
ペン先  :18K, M
軸など  :樹脂、スターリングシルバーの網
吸入方式 :ダブルタンク・パワーフィラー
購入日時 :2009/4/10
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 初めてこの万年筆の存在を知った時には驚いた、次の瞬間にはたまらなく欲しくなった。
 1988年2人の万年筆収集家ダンテ・デル・ベッキオとルイージ・ポリによってフィレンツェに設立されたヴィスコンティというメーカーは、流石に収集家の心をくすぐるような作品を発表し続けている。美しいセルロイドや豪華な金銀細工をふんだんに用い「こんなペンがあったらなあ」と思う正にその夢を現実のものとしてくれる。メカニックの方も大容量のインク充填が可能な特許ダブルタンク・パワーフィラーの他、軸の胴体に蒸気船の車輪のような吸入の仕掛けの付いた20世紀初頭のクレセント・フィラーという方式を復活させたりした。或るコンセプトに対して万年筆のデザインのみならず容器や付属品まで含めてその世界を体現させようとするその姿勢にはいつも感心させられ、誘惑に乗って買わされてしまうのだ。
 このペンの名称である「キャメロット」はアーサー王伝説や中世騎士物語のファンなら知らぬ者はいまい。彼の王国の首都の名にして、かの円卓のある居城の名でもある。これほどコンセプトの分りやすいペンも珍しい。軸やキャップに巻かれた銀の網目飾りは騎士が着る鎖帷子を、キャップトップの形は兜を、クリップは聖剣エクスキャリバーをそれぞれ表わしている。少し薄汚れたように見せかけてあるビロードを張った木の箱は王の棺、従ってそこにペンを収めるとあたかも死んだ王が棺の中に聖剣を抱いて横たわっている図になる。
 だが宿敵モードレッドとの戦いに勝利したものの致命傷を負ったアーサー王の最期の地はキャメロットではなくアヴァロンではなかったか。傷を癒すために渡ったアヴァロン島で果てたともまだどこかの洞窟で生きているとも言われているところが伝説の英雄らしい。