2014年8月13日

月明の筆となるべくミナレット

メーカー :Visconti
名   称: Taj Mahal, Silver、限定 361/888
ペン先  :18K, F
軸など  :レジン(黒)、シルバー925
吸入方式 :ダブルタンク・パワーフィラー
購入日時 :2010/7/9

2014.8.13

2014.8.13(2)

 タージ・マハル、言わずと知れたインドにあるイスラム建築の傑作で世界遺産にも登録されている。ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが愛する妃ムムターズ・マハルの死を悼んで建設した総大理石の墓廟であり世界一美しい墓と言われる。ヴィスコンティのこの万年筆もまたタージ・マハルに負けぬくらい豪華かつ繊細で美しい仕上がりである。
万年筆の収集を始めた頃、あるサイトで見かけたヴィスコンティのペンの豪華さに目を瞠った。それは「3人のマギ」(つまりイエスの誕生の際の3博士の礼拝)という名のペンで、貴金属の細い針金で成形した幾何学模様を軸の周囲に巻き付けた線細工が施されている。シルバー、ゴールド、バーメイルの3本がひとつのセットとなっていて高価ではあったが所有欲をそそった。

 このタージ・マハルは「3人のマギ」ほどではないが同じような銀線細工が施された名品である。下に見えるのが収納箱だが幾何学模様の透かしの入った木箱でこれまた豪華な印象。マギより軸は太い。同じペンのバーメイル版(写真右、銀に金メッキ)も持っていてこちらは毎日のように使っている。シルバー版と模様が全く違うので印象はかなり異なる。軸の地のレジンも黒でなく海老茶である。ダブルタンク・パワーフィラーの威力でインクは一度吸入すると長持ちする。
 これを手に入れた頃はこれほど太くて巨大なペンを持ったことがなかったので心底驚いた。ところがその割には重くなくインクフロー良好で書き味もいい。クリップがないので専用の革のペンケースに入れて持ち歩いている。ミナレットに似せた天冠からどことなく密教の法具を髣髴させる。研究会の時など机の上に置いていると周囲は異様な物を見る目で見るから面白い。