2014年8月20日

バビロンの城壁凭れば冷やかに

メーカー :Montblanc
名   称:パトロンシリーズ、Semiramis、限定3722/4810(1996年)
ペン先  :18K, F
軸など  :ブラック プレシャス・レジン、金の線状細工、深紅のエナメルラッカー
吸入方式 :吸入式
購入日時 :2012/9/21

8.20

 モンブランは作家シリーズの上級クラスの万年筆シリーズとして同じ1992年から毎年パトロンシリーズを発表している。作家シリーズには如何にも書き味を重視した質実な感じのペンが多いのに対し、パトロンシリーズは見るからに豪華絢爛である。パトロンシリーズの対象は歴史上の王や君主が多く宝石や貴金属がふんだんに使われ、精巧な装飾が施されている。

 この「セミラミス」はゴールドプレートの透かし彫りが全面を覆い、所々の赤いエナメルの模様がアクセントとなっている。ベースの黒が黄金の輝きを弥が上にも引き立てる。クリップに刻まれた怪獣は有名なバビロンのイシュタル門の煉瓦の浮き彫りに登場するものだ。

 そもそもセミラミスというのはアッシリア王シャムシ・アダドの王妃でわが子の摂政として権勢を振るい、バビロンの都の基礎を築いたという伝説上の女王である。今では後世の新バビロニア王ネブカドネザル2世に帰せられている世界7不思議のひとつバビロンの空中庭園も長らく彼女が建設したとされてきた。ロッシーニのオペラ『セミラーミデ』は彼女が主人公。その序曲は実に歯切れがよく、変化に富み、ロッシーニ作の曲では筆者の最も愛するもののひとつ。

 いかにもバビロンの女王に相応しい息を飲むような美しいペンである。パトロンシリーズはおいそれと手に入れることのできない高価なものであるが、「セミラミス」とマイセン磁器製の「ポンパドゥール夫人」だけは何が何でも手に入れたかった。そうして今2本とも手元にある。但し「ポンパドゥール夫人」は使用しているが「セミラミス」にはインクを通していない。