2014年8月26日

竹伐つて秋声ひとつ解き放つ

メーカー :Sailor
名   称:すす竹
ペン先  :21K, M、長刀エンペラー
軸など  :旧家の屋根裏でゆっくりと燻されたすす竹
吸入方式 :カートリッジ/コンバーター両用式
購入日時 :2010/5/11

2014.8.26

木を使った万年筆は結構多い。このシリーズでも今まで3本取り上げて来た。よくあるのはブライヤー製。地中海沿岸地方原産のエリカ・アルボリアというヒース科の落葉低木の根瘤(バールと呼ぶらしい)から作られたもの。硬くて熱に強いのでパイプの素材にもなる。セーラー、プラチナ、中屋万年筆、オマスなどから出ている。

世界広しと言えども竹の万年筆を作っているのはセーラーだけだろう。この「すす竹長刀研ぎ万年筆」の他「ほてい竹万年筆」それにすす竹万年筆の考案者である長原宣義氏の勇退を記念した「竹塗り万年筆」など。とりわけ長原氏が発表するや世間をあっと言わせたこのすす竹はその後の竹製ペンの基本となっている。それにしても旧家の屋根裏でゆっくりと燻されたすす竹に注目してそれを万年筆に仕立てようという遊び心が素晴らしい。まるで座頭市の仕込み刀のように竹の中から万年筆が現われる瞬間は驚きに満ちている。

長原さんという人はファンからは「万年筆の神様」の称号を以て呼ばれ、厚労省の表彰する現代の名工にも選ばれた。セーラーのペン先には通常の細字、太字などにとどまらない様々な種類がある。その発端となったのがこのペンでも使われている「長刀研ぎ」。万年筆のペン先には硬くて摩耗しにくいイリジウムという物質が付けられているが通常より大きいペンポイントを付けて長刀のように長く、角度を滑らかに研ぎ出したのが「長刀研ぎ」だ。漢字のトメ・ハネ・ハライなどを美しく書くことができると言われる。それ以外にもコンコルド、クロスポイント、エンペラー(ペン先の上にもう一枚の巻きペン先を被せインク供給を補助)など種類が豊富。