神は自然を下僕にできず世界はこのざま
飼い主の御中虫が、珍しく散歩に連れ出してくれた。行き先は神社。でも境内は犬猫禁止なので、神社の裏手にまわる。なんの木だかわからないが、いろんな大木が聳えていて、落ち葉もふんだんにある。私にとっては天国のような場所だ。しかし虫は浮かぬ顔をしている。
「なにか気に障った?」
「いいや、なんにも。ただねえ」
「ん?」
「ここって自然の宝庫でしょ。自然、やりたい放題。それってうるわしいんだけどさ」
「ふむ」
「やりたい放題の自然が、時として震災とか津波とかを起こすとしたら、自然を野放しにしていいんかなーとか思うわけさ」
「ふーむ。でも震災とか津波って、天変地異でしょ。ふつうの森林管理なんかとはわけが違うと思うんだけど。それにここだって、野放しのようでやっぱり誰かが管理してるよ」
「まあね。でも仮にカミサマがいるとしてさ、なんで天変地異を許すのかなーって、思ったりする。カミサマが創ったものなら最後まで面倒みろってかんじ」
「ま、仮にいたらという話だね。カミサマを認めてる宗教はどういうふうに解釈するのかな…天罰!か?笑」
「うぜえな笑!とりあえずノニノニ、あんたは全力で自然の中を走っときな!」
そして私は散歩用リードをはずしてもらったのだった。