2011年7月10日

衣食住足りて圧倒的につまらん
 
「ねえねえノニノニー」と飼い主の御中虫がベッドからころげおちそうな体勢で言う。
「なに?」
「チミは今シアワセかね」

今度は何の話題だ。一瞬考えて、「幸せだよ」と言うと、勝ち誇ったように
  
「嘘だ!嘘だ!飼いウサに幸せなんかあるもんかー!毎日ゲージに閉じ込められてさ、餌食って寝て餌食って寝ての繰返しじゃないかー!チミはフコーだっ!」

暴れるのでベッドから転げ落ちた。
  
「そう言われても…別に不満はないよ。ときどき外にも行けるし」
「恋したくない?」
「え」
「かわいい兎とお付き合いしたくなあい?」
「かわいい兎が近所にいるの?」
「いない。きゃっはははは」

さすがの私もむっとした。

「まーアレよね。兎の寿命を仮に10年としよう。その間チミはワタシに飼われつづけるとしよう。ワタシはこれ以上兎を飼う予定はないから、チミはこのうすぐらい部屋で餌食って寝て餌食って寝てを10年繰返すのだよどうかねそれでもチミはフコーではないかね、あ、アイス食べよう」

虫がアイスをとりに台所へ行っている間に私は反論を考えた。
  
「ねえねえ虫ー」と私は言った。
「んが?」
「虫はいまシアワセかね」
「うん、幸せ」
「ふふふ、嘘だね。虫には友人知人恋人がいるとはいえ、彼らは平日働いておる。平日のキミときたらどうだ。兎相手にぶつぶつくだを巻いて、ネットを見て、タバコを吸っているだけではないか。体力がないからほとんど外出もしない。いわゆるひきこもりだ。寿命はそうだな仮に70年としよう。その間キミは飯食って寝て飯食って寝てを」
  
と、そこまで言ったか言わぬかのうちに、虫はどこかへ行ってしまっていた。たぶん風呂場で泣いているんだろう。

  

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