才能は出てゆくばかり虹かゝる
窓の外を見ながら飼い主の御中虫がぼんやりしている。
「よく降るねえ、ノニノニ」
「そうだね」
「散歩にも行けないし、あーあ俳句でもつくるかーでもだめあたし才能ないんだったわー」
「才能ないんだ?」
「あるわよ!馬鹿にしないでっ!」
どっちなんだ。
「でも才能ってさ使うと減るのよね。あたしこないだ句集出したから、あれでだいぶ減ったよね才能」
「お言葉ですが、本当に才能のある人だったら才能は減ったりしないと思います。むしろ放出するたび湧いてくるというか…」
「団子つくろー!」
「急に話題を変えないでくださいっ」
虫は本当に団子をつくりはじめた。そして生地をこねながら言う。
「あたしねー俳句の才能が底をついたら団子職人になるんだーそれか陶芸作家。それか画家。あ、花屋さんもいいな」
「軽く言うけど全部それなりに難しいよ…」
「夢じゃん夢!夢は口にだしといたほうがいいよーうっかり実現する確率が1%上がる」
「そんなもんかねえ」
「そうだよ。ノニノニも将来は亀になりたいとか考えてみたほうがいいよ、いつ兎の才能が底をつくかわかんないんだし、あ、虹」
いつのまにか雨はやんでいた。そして団子はわりとおいしかった。