「塩」には、浄めの塩や、波の花という女房言葉(「死を」は縁起が良くないため)など、
死に関わるものという印象がある。「御仕舞い」という言葉がより一層、死を思い起こさせるのか。
ふわっとした詠み口とリズム感が、音として快感であり、呪文のようで楽しい。
この句は、回文である。(「イマシオマイテイマオシマイ」とルビあり)
内容の死のイメージとこの循環する文体が調和している運命性を味わいたい。
そして、塩の粒がキラキラと舞う、そんなただ「今」だけが本当のもので愛すべきものなのだ。
「弥勒の黒身」(『21世紀俳句ガイダンス』現代俳句協会、1997)より。