2015年4月10日

胎盤のぬめりびかりの仔馬かな

野生のウマは、「ウマ属ウマ」の本質を体現しているといえるだろうか。農耕や定住が本格化する以前、ウマの群れが自由に駆け回っていた頃の真髄を。庭いじりの具となった飼育馬は、堕落してしまったのだろうか。文明社会のウマは堕ちたウマで、野生のウマは高潔なる原種なのか。こうした問いにたいしてどのような立場をとるかはさておき、そもそもこの議論の切り口は、アメリカ先住民のアイデンティティに関する議論と薄気味悪くなるほどよく似ている。

J.E.チェンバレン(2014).『馬の自然誌』屋代通子 訳 築地書館 pp.218