2015年4月12日

翅おもに蝶の部位とや宙にゐる

そのため、延々とつづく詩が生れたのだ。私の詩的新陳代謝の賜物だ。仕事が終わると、グーベルの石工の小部屋で、最初の小彫刻を石灰岩に彫りつけた。女性のトルソー、表現豊かに作られた少女の頭部。そしてさらに、喘息の老人たちがタバコをもらってモデルを務めてくれたスケッチがペリカンのノートを埋めた。

ギュンター・グラス(2008).『玉ねぎの皮をむきながら』依岡隆児 訳 集英社 pp.291