2015年6月8日

靴紐を結びなおせば夏の雲

電車の窓から、山のかたちが人間が横たわっている姿に見えた。キャリーケースとリュックサックで向かった先は、大洗港。北海道へは船で向かうと決めていた。大洗港から苫小牧港までの十九時間の旅だ。出航の時間は日が暮れた頃。橙色に照らされた港は、ゆっくり遠のき、やがて一粒の光となった。
船内で書いたと思われるメモによると、「前からの波2メートル、そのうち3メートルになる」とある。出航してすぐに、波の高さを伝えるアナウンスが入ったのだ。メモにはさらに薄い字で「壮絶」とある。酔ってしまったのだ。それでも、ベッドに横になり嘔気が収まる度に、レストラン、売店、映画館、浴場などを探索して歩いては吐いた。