2015年6月9日

梅雨冷えや写真の月に触れている

kemurinonioi

胃が空になった頃、甲板に出てみることにした。がさついた強い潮風を受けながら階段を上がると、暗い甲板に明かりが差しているのが見えた。近づいてガラス窓から中を覗くと、長距離トラック運転手などの専用客室だった。卓上には、焼酎の紙パックがどしんと置かれ、男たちは揺れも気にせずに酒盛りをしている。
満月の夜だった。海の先のできるだけ遠くが見たいと目を凝らしたが、暗闇が広がり、どこも遠く、どこも近いような気がした。月明かりが海を照らして、揺蕩う光の道が伸びていた。