2015年6月10日

腰掛けるなら紫陽花の水色に

日の出の時間に目を覚ましたが、曇っていた。けれど昼近くには、晴れ間が見えはじめた。雲間からの光が海を滑っていく。遠くに広がっている山がごつごつと見え始め、違う大地へやってきたのだということを実感した。
苫小牧港に降り立ち、バスで駅へと向かった。苫小牧駅から富川駅までは、一時間ほど。雲が多く、ほの明るい光の中、どこまでも平たい海や牧場の景色は幻のように映り、いつのまにか寝てしまっていた。富川駅で時刻表を確認すると、バスが来るまでまだ三十分以上あった。無人駅で、がらんとした待合室で寒さをしのぐことにした。そうしていると、駅前の道を少年が自転車が通りかかった。あれ、と思わず立ち上がってしまった。私の見間違えだったのだろうか。狐の耳が生えていたように見えたのだ。船酔いでよく眠れなかったせいだろうか、などと考えているうちに道南バスがやってきた。