2015年6月11日

蝙蝠を見失いたる水の際

写真b_0611

東京は、看板のネオンや街灯、電車の音や喧騒に、夜が引っかかって、闇は地上に達しない。明かりをぼんやりと映し出した川面を、戸惑うように飛んでいく蝙蝠を思い出した。
気がつけば、バスは沙流川を渡り、やがて赤い看板を通り過ぎた。「ユーカラのふる里 平取町」。降り立った場所は、まさに中学校修学旅行で訪れた萱野茂資料館の前であった。日が沈んだばかりの二風谷は、夜の風が吹き始めている。「バスを降りたら山側に向かって…」というレラさんの言葉を思い出しながら歩き始めた。しかし、眼に外灯の明かりが目立つようになったと思ったら、もう辺りはすっかり夜になってしまっていた。大きな布のように闇が覆ってくる。だんだんと不安も膨らみ、焦りながらしばらく歩き回ると、「坂道があるから…」という言葉通りの道を見つけた。そうして、どうにか辿り着いた。いや、探しに出てきてくれた迎えの人に見つけてもらったというのが正しいようだ。