2015年7月7日

大門に夏ゆふぐれの久しかり

大阪の友人オオイケが東京に遊びにくると言うのでメイドカフェに行った。筑波から東京に出るには「つくばエクスプレス」という電車が便利で、その終点が秋葉原だった。秋葉原といえばメイドさんがいる。

オオイケともうひとり早稲田のサキさんが来た。たまたまおれが会員証を持っているところがあったのでそこに行った。べ、べつに常連じゃないんだからね。

週末の夜だったので帰宅者は多かった。おれたちは少し待ったあとようやく帰宅できた。めくるめくメニュー――ぴぴよぴよぴよ♪ひよこさんライス、萌え萌えピンクカレー♥〜ピュアラリ∞キュアラリ魔法のじゅもん〜、まっくろしゅわしゅわ等々――のいずれにもこころ惹かれた。おれは迷った末に注文した。

「まぜまぜ♪かるぼなぁ~らお願いします」

オオイケが頼んだのはぴぴよぴよぴよ♪ひよこさんライスだった。出来立てのオムライスにメイドさんが絵を描いてくれる。メイドさんは熟練なのでたいていの動物やキャラクターは描ける。「何をお描きしましょう♪」

「メイドさん、俳句作ってください」

オオイケの意味不明な注文にメイドさんは絶句する。

「俳句ですか?」

事態を察した近くのメイドさんがフォローを入れる。

「あれだよ、人間だもの、みたいな」

それでも二の句が継げないメイドさん。申し訳ない気持ちでいっぱいになるおれ。

「あの、私の座右の銘でもいいですか?」

すごい機転だ!! おれは感激した。そういうわけでメイドさんはケチャップに「桜は散ります」と書いてくれた。俳句には季語というものがある、というルールを彼女は学校かどこかで知って覚えていたのだろうか。

最後に彼女は隅に小さな四角を描いた。おそらく印であろう。これは俳句だとおれは思った。

秋葉原のメイドさんは全国トップレベルだとおれは信じている。前に来た時にはいきなり中国人客を相手にペラペラと中国語をしゃべり出したのでびっくりした。聞いたら英語と中国語がいけるらしい。

べ、べつに常連じゃないんだからね。