2015年9月10日

目つむりてゐても白桃めくランプ

部屋にはウィスキーと日本酒と麦焼酎とワインと発泡酒を常備している。なかでもウィスキーが1番好きである。サークルの飲み会も楽しいがなにしろ酒は美味しくないので、家に仲間を招いてグラスを傾ける方が好きだ。こういう生活をしているので、バイト代は大体酒と句集とで消える。それで一向に構わないと思っている。

大学の同級生と家で飲んでいたら、テレビが壊れた。最近のテレビは叩いても治らないので厄介である。おそらくぼくらの世代が、叩けば治るタイプのテレビを見ていた記憶のある最後の世代なのではないだろうか。もう夜も深まっていたが友人みな朝までテレビゲームをしたいと粘るので、折れて中野駅前のドン・キホーテにテレビを買いに行くことにした。電車は動いている時間だったが、交通費をケチって歩くことにした。30分ほどかけて到着し、聞いたこともないメーカーの大画面液晶テレビを3万円で買わされた。子どもの頃から電器屋で知らないメーカーがあるとこんな怪しいものを誰が買うのだろうかと思っていたが、ぼくらのような人間が買うんだな、と初めて納得した。ついでにウィスキーやおつまみを買い足して、みんなで月の下を歩いた。道に迷ってしまい、1時間半くらい歩いたような気がする。

それでも、いや、だからこそ、おれはしあわせだった。みんなで、こんな暮らしがいつまで続くんだろうか、と話した。くらいくらい裏路地を、交代でテレビを抱えながら進んでゆく。長いトンネルを走り続ける列車に乗っているような、そんな心地で歩いた。環七の街灯が煌々と見えた。持ち重りするウィスキー。これを飲み切った頃にはきっと、ぼくらは疲れて眠ってしまうのだろう。鼻の奥に、樽がかすかに薫った。