2015年11月10日

おおよそで割って白餡今朝の冬

先月の21日、22日と、町の小さな劇場<シアターねこ>に平田オリザさんの作品がやって来た。芝居は苦手と尻込みするタキさんを説き伏せて、観に行った。
一日目の「走りながら眠れ」は、大正時代のアナキスト大杉栄と伊藤野枝の最後の2ヶ月を描いた会話劇。二百人入るか入らないかの劇場の、通路に椅子を置くほど超満員。
初日の芝居終了後には、オリザさんご本人が登場。トークは、観客との質問形式で行われた。

オリザ:「え~と、ご質問が無ければ終わっちゃいますが」(会場笑)

会場 :なぜ北一輝や幸徳秋水ではなく、大杉栄を取り上げようと思ったのですか?

オリザ:父が私の名前をつけるときに、「オリザ」にするか「栄」にするか迷ったという話を聞いていたので、調べてみた。オリザはラテン語で「稲」という意味で、食いっぱぐれが無いようにと。栄でなくて良かった(笑)。そして、栄は芝居になるかなと思った。
小林多喜二になると、かなり悲惨だが、大杉栄の時代はまだおおらかなところがあった。
この人のこの時間が演劇になるかどうかを考える。栄がフランスから戻って死ぬまでの時間があまりに短かったこと。アナキズムの人たちにも、日常はあるはずだとの思いがあった。

会場 :二人芝居を自分もやろうとも思っているのですが、何かアドバイスを頂きたい

オリザ:二人芝居はやめた方がいい(笑)。僕も二人芝居は二十年前に作ったこれ一作。たいてい面白くない。三人居て、ひとりが居なくなって、残った二人が悪口を言って芝居は成り立つ。必ず居ない奴の悪口を言う。明日上演の「ヤルタ会議」なんか、まさにそれです。

会場 :「走りながら眠れ」という題は、どういう思いでつけられたのですか。

オリザ:ただ思い付いた(笑)。思い付いて、かっこいいなと思った。

会場 :お芝居を作っている理由を教えて下さい。

オリザ:登場人物にちょっとづつ自分が点在している。
芝居を始めた理由は忘れたが、続けている理由は一番ドキドキすることだから。
子どもの頃から文章書くのは得意だったが、文章がうまくても得することはほとんどな
い。しりとりに負けないことくらいだった。
野田秀樹など、先輩に優れた人が多くいたので同じにやっていたのでは到底かなわない。だから現代口語演劇を編み出した。
二十年後も通じる言葉で創るようにしている。ポケベルとかは携帯に言い換えているが。

会場 :今の時代のタイミングで「走りながら眠れ」を再演した意図はありますか。

オリザ:それは全く意識していません。そういう風にとって頂くのは有難いとは思いますが。

「ファーブル昆虫記」を翻訳する野枝と栄のやりとりに笑いがこぼれ、そしてしんみりした。
あとから「劇作家 平田オリザのヒミツ」をネットで検索したら、オリザさんの演劇はフ
ランスでは「俳句のようだ」といって大いに受け入れられたという。