2011年7月14日

火あぶりにされても明日の予定を立てるぜ
 
飼い主御中虫が、はしゃいでいる。

「ベッドの上で跳ねるとまた転げ落ちるよ」

とたしなめたのだが、案の定
「わー」と言って転げ落ちた。
  
「もーノニノニ!ちゃんとあたしを受け止めてくれなきゃダメじゃないの!」
「私はクッションですか…そんなことより何をそんなにはしゃいでるの?」
「明日はねえ、まず太極拳の練習に行くでしょ。そのあと少林寺拳法の見学に行くでしょ。そのあとダーリンのおうちに行くのさ!きゃほーい!」
「ふーん、もりだくさんだね」
「うん☆」
「でも明日は豪雨ですよ」
「え…」
「天気予報がそう言ってます」
  
虫はみるみる不機嫌な顔つきになり、「けっ」と吐き捨てた。
「ええ、ええ、どうせあたしの愉快な計画なんていつだって完遂されたためしがないんだわ。せっかくひきこもりのあたしが外出しようとがんばっているのに豪雨?ふざけんじゃないわよ気象庁!」
「天気は気象庁のせいではないよ…」 
「だまれ兎!」
「だから、ちゃんとノニノニって呼んでよー」

虫はその言葉を無視して立ち上がり、「シャワー浴びてくる」といって浴室に行った。虫は不機嫌になるとシャワーを浴びる癖があるのだ。

15分後、シャワーから上がった虫は、なんだかふっきれた表情をしている。
「機嫌なおったの?」と訊くと「うん。一句できたから」と言う。

「あのね、こうよ。『豪雨でも明日の予定をこなしましょう』」
「うーん…なんか標語みたいだね」と私は唸ってこう言った。
「こっちのほうがいいんじゃないかな。『火あぶりにされても明日の予定をたてるぜ』どうかな?」
  
すると虫はまた、眉間に不機嫌なしわを寄せて黙り込んでしまったのだった。
実のところ、虫の俳句のほとんどは私ノニノニが添削しているのである…秘密だけど。
  

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