2016年2月17日

囀や堤を越えて球拾ふ

2016年2月17日スピカ

狐渡し跡のある桂川河川敷公園、そこから土手を下流のほうへ進んでゆく。枯葎が蔓延っていてお世辞にも綺麗とは形容できないどころか、ところどころ薄気味悪く感じることもあるというのが正直なところなのだけれども、これも味だろう。すこし進むと早速、日立物流イオン関西NDCが見え、フォークリフトや荷を積んだ車が常に動き回っている。やっぱり大山崎というのは物流の拠点なのだな、とこういうところからも思ってしまうのである。

土手沿いに標石が点在していて、「桂川」と書いてあるかと思えば、次は「淀川」と書いてある。ひとつづきの土手が、あるところまでは桂川の土手、そこから先は淀川の土手となるのである。何も不思議なことでなく当然のことである。どちらかといえば、桂川河川敷公園に行くまでの小泉川土手で、国と府との河川管理の境界を示した看板が立っていて、こちらのほうがなんだか変な気分になった。それはさておき、「桂川」と書いてある標石、別の面には「三川合流地点から0.0km」とあり、なるほどここがそうなのか、と思う。思うだけで、特別感動が強いわけでもなく、というのも、実を言えばその場所からは全くと言っていいほど川が見えない。三本の川がほぼ一点で交わることは奇跡なのかもしれないけれども、そういう幾何学的なところにではなく、その絶景ぶりこそが人の心を動かすのである。たぶんそのようなことなのだろう。標石の文字が「淀川」になってからは、別の面に彫られているのは「淀川距離標36.0km」。三川合流のことなんてどこ吹く風、書いてあるのは河口からの距離。川というのは先のことしか見ないものだなあ。

さて、もっと進んでゆけば「府縣界標」という標石。京都府と大阪府という、たった2つしかない「府」の境だから、「縣(県)」などと入れず堂々と「府界標」と書けばいいのではとも思うのだが、文字の収まりはよい。ちなみにこの標石、大型車の交通も多い171号線脇にあり、歩道らしい歩道もなく、側線とラバーポールによって区切られているだけだから、この標石を見ている間は背後がずっと恐ろしい。土手と平行に、結構近い距離で同じ高さを東海道新幹線が走っているために、新幹線が通れば一瞬の轟音に心臓が止まる思い。命がいくらあっても足りない府境見物である。ちなみに、JR山崎駅の下りホーム上には大阪府と京都府の境を示す標識が立っている。こちらはリラックスしてみることができる。離宮八幡宮の横、線路沿いの道には同じように境界を表す標石があるのだが、こちらに書いてあるのは「従是東山城國」。なかなかの風格である。ただ、命に危険は感じない。