夏草総じて洞察力を欠いている
飼い主御中虫の家には庭がある。なかなか風情のある庭である。がしかし、半年もの間なんの手入れもしなかったため、いま庭はどえらいことになっている。
「『ハウスステップの植松』が悪いのよ!」虫は綿菓子を食べながらわめいた。
「誰それ?」
「不動産屋よ!奴はこの家を契約するときに、『半年に一回業者が庭を手入れしますから』とのたまったのよ!ちなみに『ハウスステップの植松』は実名よ!」
「実名出さなくても…てゆかさ、電話したら?植松氏に」
「ところがぎっちょんもう遅い賽は投げられたルビコン河は腰までつかってしまったの。あれを見てノニノニ」
見ると、枝切り鋏が玄関に置いてある。
「これはね、弟が買ってきたのよ。弟は自力で庭をなんとかしようとしたらしいわ、若いって素敵ね」
「はぁ…で、どうなったの?」
「どうなったもこうなったもアンタ!このざまよー!!」
虫が示した庭は、なんだか半分ほど手入れされ、残りの半分はカオスというわけのわからない状態になっていた。
「つまり弟は半分手入れしたところで飽きてしまったのよ。残りはあたしのノルマというわけだけど…うっゴフッ(吐血)」
「あざとい演技なんかしないでください。つまり虫さんは手入れしたくないんですね」
「まあな!」
「威張らなくても」
「だいたいあたしは夏草って嫌い。どこでもここでもおかまいなしにはびこりやがってヒトのかかとをちくちくさしてよー!生命力の横溢っていうんですか?漲る育つ力?そんなもん、ぷっぷくぷ~だ!!」
「嫌いなのはわかったけど、手入れはした方がいいと思うよ。これからどんどん草は伸びて虫も湧くし…」
「虫ー!!あの忌まわしいゴミのような生命体!!だいたいあやつらは…」
虫は今度は虫に対して毒を吐きはじめた。もう手に負えないので放っておこう。
(それにしても自分の名前も虫のくせに…)