2016年8月24日

(か)みふふむ臍(ほぞ)こそあらめ楊原(やなぎはら)

小学生のころ、僕はひどく侮蔑的なあだ名で呼ばれていたらしい。らしい、というのは、僕自身にその自覚があまりなく、にもかかわらず、僕のあだ名を即刻取りやめることがホームルームの議題となった記憶があるからである。考えてみれば、ずいぶんな騒ぎになってしまったものだが、それ以来僕は「○○くん」と呼ばれるようになった。僕の住んでいた地域には当時小学校と中学校が一つずつしかなかったし、遠くの私立に通う子どもなど皆無だったから、同学年の全員が九年間まで同じ学校で過ごすわけで、だから、この関係は中学卒業まで続いた。この記憶は少し寂しい印象を与えるかもしれないが、他人をあだ名で呼ぶのが苦手だった僕にはむしろ快適だった。
ところで、僕にあのあだ名を付けた友人を僕はいまでも思い出すことがある。いつだったか、どうやら彼が僕とはまるで違う人生を歩んでいるらしいと聞き、妙に納得したのを覚えている。