2016年10月9日

顔面に筋肉のあり烏瓜  

気になる男の子ができた。呑み屋で知り合ったのだが、なかなかノリが良く、話も合う。そのうち約束をするでもなく、馴染みの店でいつも顔を合わせるようになり、途中まで一緒に帰るような事もあって、これってひょっとしていい感じなんじゃない?とか思ったりもして。ある晩話の流れでスキーの話になった。聞くと彼も学生の時にあちこち滑りに行っていた。どこのスキー場に行ったとか、あそこのゲレンデは面白かったとか、映画の『私をスキーに連れてって』の話とか。そんな話でひとしきり盛り上がる。ちょっと失礼とトイレに立つ。用を足しながら考えた。これって誘ういいチャンスじゃないの。いきなりゲレンデデートとかってちょっと時期尚早かなあ。ニヤニヤ。席に戻り、さっきの話の続きのように言った。
「おらばスキーさへでって」
すると少し間を置いて彼が答えた。
「わー車持ってねぇすけ」
う~ん、この微妙な間。これは体のいいお断りなのではないか。愛車の話、前にしてたし。「あ、そう」気にしないふりをしてコップに残っていた酒を一気に煽る。さっきトイレで一人ニヤついていた自分がちょっと恥ずかしくなった。

[おらばスキーさへでって]私をスキーに連れてって
[わー車持ってねぇすけ]俺、車持ってないから